地中海の起源に関する神話物語。地中海が接する村々のつながり、海岸を抱く架空の都市と、そこにかつて存在していたであろう住民たち、そして今日そこに住む人たちの精神をめぐる軌跡についての寓話。
亡くなった父親を埋葬するためにダニエルは特別な車で生まれ故郷へ向かう。その車とは霊柩車。運転手はコメディアンさながら、一風変わったおしゃべりなエクアドル人だ。ダニ・モスカとは果たしてどういう人物なのか。彼自身が言うように単にロマンチックな歌を作るだけの男なのかもしれない。しかし貧しい地域で育った子供であることも間違いない。そして人生に往々にしてあるように、ひょんなことから深い絆で結ばれる友と出会う。音楽を生業として旅を重ね人生を謳歌した。
『ティラン・ロ・ブラン』は世界文学の最高傑作のひとつ。地中海のあらゆる街でカタルーニャ語が話され、また書かれていた時代に、バレンシア人ジュアノット・マルトレイによって創作された。作品の中で、読者は夢を叶えようとするひとりの騎士の戦いや恋愛模様を目の当たりにする。その夢とは、コンスタンチノープルを敵から解放するということだった。慣習、戦争、恋愛…あらゆることが語られるがゆえに総合小説といわれるが、とりわけ際立つのがその真実性だ。ティランは賢明さ、勇敢さを以って敵を倒していく。