2015年が始まった。バレンシア政界がここ数十年経験したことのない大きな変化を遂げるまであと少しに迫っていた。しかし、流れに逆らって生きる人たちは依然としてその姿勢を保っていた。変えたくもなかったし、変えられなかったのだ。勤めていた新聞社を辞めてフリーのジャーナリストになったマルク・センドラは町の中心地で起きた歴史的な強奪事件に関する小説執筆の準備をしていた。
魅力的で成功したジャーナリストだが、自分の環境になじめないでいるアンヘラ、 両親をひどく怒らせている反抗的なティーンエイジャー、エバ、 待ち望んだ娘が生まれた後、幸せな結婚生活がぎくしゃくしてしまった若い夫婦。これらの登場人物の人生が、同じ不幸な運命の下で絡み合う。 彼らの人生の隠された面に想像をはるかに超えた共通点があるのだが、その隠しているものとは何だ?
1809年冬の初め、ナポレオン軍の脱走兵でひどく負傷した男が山の中のとある小さな村にたどり着く。その村がこの小説の中心舞台となり、村の通りや草原で、命と秘密、情熱と希望が150年以上に渡って絡み合う。家、広場、森、空、洞窟……、生きていくという魔法以外何の変哲もない村、冬があまりに長く、空気は雪と霜の匂いがする。夢見る子どもたち、忘却を拒む老人たち、冬そのもののような日々を耐える男女たち。しかし、全てが見かけ通りではない。