わたしたちは手で電球をともせるだろうか? そして触るだけで携帯電話を充電することは? 1世紀以上も前、ある並はずれた人物が、どうやったらそれが実現できるかを発見した。だがその大胆なヴィジョンは、我々の社会システムをいくらも変えなかった。21世紀真っただ中に書かれたこの小説は、ひとりの天才の人物像を下敷きにしたフィクションだ。彼は実在の人物だが、その歴史は意図的に隠されてきた。ここで語られる出来事は、実際には起こらなかったかもしれない……。
ありえないものの世界にようこそ! 想像力の彼方まで連れていかれるのにまかせ、忘れがたきページの数々がもたらす、目もくらむ感覚に身を任せましょう。読みやすい25の章から成るこの小説には、きらきら光る万華鏡、人々の夢や欲望、幻想のありかを示した複雑な地図が巧みに仕組まれている。著者のルル・ソトゥエラ=エロリアガが、独自の詩的な語り口で繰りだす世界や登場人物たちは、突拍子もない状況や後戻りできない出来事に巻き込まれ、驚きや楽しみ、感動に読者を誘う。
シェイクスピアの最も魅力的で想像力豊かな作品に基づく、喜びあふれる生き生きとした夢物語。いたずら好きであわて者で、ふざけんぼうの妖精パックが、ウイリアムという少年に物語を語る。この少年がのちに、歴史上有名な劇作家となる。本書は原作の精神に忠実に、世界文学の最高峰となっている作品の特徴を生かして書かれている。わくわくする物語が、10歳の読者を魔法とファンタジーいっぱいのおとぎ話の世界へと運ぶ。詩的な言葉づかいややわらかい語り口、登場人物たちの優しさも素晴らしい。
自分の命を守るため、若きゾーリンガーは生まれ故郷を捨て、遠く離れた土地で7年間、ひとり冒険の道を歩み、ありとあらゆる職業についた。つらい亡命生活ゆえの経験は、やがて啓発の道に変わっていく。たとえば、毎日謎めいた電話受付係の女性からの仕事の電話を受ける、とある駅のごく小さな守衛室で真実の愛を知る。軍隊の隊列の中で仲間意識と最も忠実な友情をかみしめる。消えゆく森の壮大さの中で自然の神秘を発見する。そして、何より、些細でつつましい仕事の尊厳を尊重する心を学ぶ。
本書Cançons d'amor i de pluja(愛と雨の歌)に収められている25の物語は、熟年の傷つきやすさとくだらない習慣に関しての想いと考察がアンサンブルのように構成されている。セルジ・パミエスは簡潔で力強い文体で、典型的ロマンチシズムの紋切型と、感情的心気症の束縛を解釈しなおす。浄化され抑制された散文と文体が、辛辣さとバイタリティとメランコリーの間でのバランスを模索する。
赤道ギニアの独立宣言の翌日、フェルナンド・ポー島サンタ・イサベルの黒人地区付近で、街のスペイン人コミュニティのリーダー格、パブロ・モンテシノスの死体が発見された。どう見ても自然死と思われたが、治安警備隊に配属された、書類整理担当の役人が、糸口をさぐり始める……。このように始まる本書は、かの地におけるスペイン人の最後の数か月と、非植民地化プロセスの失敗を描く。無責任な政府の決定、経済的利害、人種間・男女間の差別……そして祖国喪失、亡命、悲恋、失われた楽園の物語だ。
女神と牝牛と初恋が交錯する物語。北部の街でのひと夏と、性の発見についてのリアリスティックですばらしい物語。青年ルディ・リベロは父親が予防拘禁されているので、この夏、指図する者がおらず自由を謳歌している。彼の父は政治活動がきっかけで告発されただけでなく、女性関係もややこしい。そして息子であるルディも似たような蜘蛛の巣にからめとられていく。夏の間に、ルディは大人への一歩を踏み出す。けだるい雰囲気の美しい女が、先の見えない、だが甘美な愛への未知の旅にルディを導く。
ペレスねずみってだれか知っている? ひつじが眠らないのはなぜ? くりの実がどんなにたくさんのことに役立つかわかるかな? おやすみのキスをしてもらいながら、そんなたくさんのことをお話してくれる本。寝る前に読む短い物語集で、字を読み始めて間もない子どもたちを、毎晩ベッドに入る間際の5分間、夢の世界にさそってくれる。なかなか寝ようとしない小さな子どもを持つ、すべての親に欠かせない本。親しみやすい登場人物たちと楽しく愛情のこもったストーリー、そしておやすみのキスが基調になっている。
1943年、カレウで農民一家が惨殺された事件は、片田舎のパリャルス・ジュッサの農家や近隣の村々に衝撃を与えた。だが何人もが殺されたそのニュースは、あまり遠くまで届かなかった。新生スペインは平和の天国だというイメージを与えたい時代、政府の検閲が新聞を沈黙させていた。70年経ってペップ・コイは、パスナーダでの子ども時代、心にきざみつけられたこの恐ろしい出来事の秘密を探り始めた。
1935年、マドリード。共和派の知識人の粋が集まる学生寮に、アメリカ人の若い娘が到着する。実在の人物と架空の人物がマドリードの街角で交錯する。ポプラの丘の夕べという学生寮の有名なパーティーにひきよせられて、芸術家、ミュージシャン、伊達男、詩人、夢想家、学生たちがあらゆる場所からやって来る。ところが、ひとりの学生の死体が近くの灌漑用水用の運河に浮かんでいるのが見つかり、学生寮の心地よくすみきった雰囲気は突然吹き飛ぶ。