上野教授は娘のために子犬を拾う。すぐに教授と犬のハチ公の仲は特別なものとなる。ハチ公は毎朝教授を駅まで送り、夕方5時半にはまた駅で帰りを待つ。平日は毎日。毎月。毎年。友愛と忠誠に基づく絆が結ばれた。だれにも断ち切ることのできない絆が……。
新しい家に住み始めてから、ロシオは不安でびくびくしている。この家は、大きすぎる! そこでいつもママに、ぺったりくっついている。まるで糸で縫いつけられたみたいに。仕立て屋ではないけれど器用なママは、そこでを思いついた……。ロシオに特別なワンピースを作ってあげよう。カラフルな糸のおかげで、一緒にいなくても、いつもママとつながっていることがわかる服を。小さな子どもが孤独の恐怖に立ち向かうのに役立つ、心あたたまる本。心の絆のほうが物理的絆よりも強いことを教えてくれる。
トムは児童養護施設に住んでいて、動物が大好き。だからサーカス団と暮らす女の子ラナと出会った日、逃げ出してふたつの夢をかなえるチャンスだと思った。夢とは、世界一魅力的な動物たちのすぐそばにいること、そしてまだ会ったことのない父さんを探しに行くこと。ある日、夢にも思わなかったことが起こる。ライオンたちといっしょに寝ることになったのだ。
ラテン文学研究者のアレックスは、学会に出席するためにニューヨークに飛ぶ。そこで有能でクリエイティブな写真家のジョナスと知り合い、自分が同性愛者であることに気づく。アレックスは教養があり神経症的で、ペダンティックで感受性が極めて強い。ジョナスは美形で、会う者みなが心を動かされる。ふたりの間に愛が芽生え、カップルとして生きることを決める。しかしほどなく、悲劇が彼らを襲う。母親の死でアレックスはバルセロナに戻ることになり、彼を理解しない冷淡な家族や社会に立ち向かうことになる。
「僕たちの中には光にしがみつく者がいる(中略)しかし、ひと思いに命を絶ちたがる者もいる。誰しもそんな地点にぶつかるだろう。暗闇の中、ひとりぼっちで、もう後戻りはできない」ハビエル・ビダル(1979年、セゴビア生まれ)の最初の小説は冒頭で、逆説的な意味での出発点に読者を立たせる。同時にそこで、本作品の主要テーマを垣間見せる。つまり、死、そして死と表裏一体になった人生の変転だ。最初の出来事は、主人公の内省の旅において起きる。
経済危機で窮地に追い込まれた35歳の作家が、都会を離れ、カタルーニャ南部の小さな村の実家に戻る。そこで自分の故郷を新たに発見をしつつ、自分がそこの人間であるが異邦人でもあることに気づく。地元の祭りのオープニングのスピーチを頼まれ、そこの景観や歴史と自分との関係をどのように語ればよいのかと考えこむ。タバコを吸いながら歩き、田舎と正反対の都会の生活について、ルーツの重みについて、名誉のアイロニーについて思いめぐらす。彼にとってこのような名誉など実のところ、失敗の証明にほかならないのだ。
クララは時々衝動的な行動をとり、それがネガティブな結果を招くことがある。妖精チックはいつもそばにいて、クララが間違いを見定めて、よく考えるのを手伝ってくれる。つまり将来同じような状況に陥らないよう考えさせてくれる。この物語のテーマは、自尊心と尊重と衝動だ。妖精(チック)とトロル(トロック)という架空の人物が、子どもの行動を見守り、よく考えさせるコーチとして登場する。そして、子どものネガティブな行動が起こるたびに、熟考するよう主人公を導く。
よい妖精がついに死に絶える世界を描いた、アクションと冒険に溢れるファンタジー小説。鏡の王都とは、テラリンデ王国の首都であり中心地。この国の妖精たちは、人間が存在するとは思っていない。この古都は「眠れる女王戦争」の間、決定的な役割を果たした。数年前のその血みどろの戦争によって、王国には危うい平和と数々の恨み、不安定な王座が残された。そんな王国で、ニカシアとドゥハルは長年権力を巡っていがみあっている。
数年にわたる家族の物語。割れたり、どこかに行ってしまったり、他の目的に使われたりしている食器をあらためて数えると、生きてきたあいだにあった喪失、発見、変化が見えてくる。著者は、2012年にバルコ・デ・バポール賞、2011年にインベンシオネス児童文学賞を受賞している。
ギリェはとても楽しい男の子。だけどそれは家のなかだけで、なじんだ環境の外に出ると臆病で内向的になる。楽しい誕生パーティも、仲良しが行けないとギリェにとっては悪夢になる。そんなときトロルのトロックが現れ、間違いを見定めてよく考えさせてくれる。つまり将来同じことに陥らないないよう導いてくれるのだ。この物語のテーマは自尊心と臆病さだ。社会的な行事は子どもの姿勢次第で、楽しくもなるし退屈にもなる。