ギリェはいつも笑顔を絶やさない、一見幸せそうな男の子。しかし少し爪でひっかけば、その下に謎が隠れているのがわかる。笑顔を絶やさない内気なギリェは、想像力豊かな本好きの少年。友だちは女の子がひとりだけ。ここまでは平穏な話だ。だが、物静かな仮面の下にはトランプの城のように壊れやすい、謎に満ちた世界が隠されている。経済的に追い詰められた父親、不在の母親、好奇心をそそられた教師、背景にあるパズルを組み立てようとする心理学者。感情、優しさ、空虚さ、発せられなかった言葉、恐ろしい謎が息づく群像小説。
真冬で海岸沿いの村で開いている唯一の店カフェターナーで偶然会った孤独な魂をかかえる4人が、こんな質問をしあう。あなたの家が炎に包まれている、そして、あなたにとって生きがいとなるもの、ひとつしか救い出す時間しかないとしたら? ゲームで始まったこの会話は、彼らの運命を交錯させながら、全く予期しなかった結果を生み、最終的に4人は自分の人生に新たな意味を見出すことになる。トンネルの果てに光を見つけるための、友情と愛の見えない絆についての啓蒙的物語。
知られていないが魅力的なひとりの女性、スペイン人歌手カロリナ・コディナの人生を綴った本。カロリナは、ロシアの天才作曲家セルゲイ・プロコフィエフの妻でありミューズだった。結婚当初、ふたりはアバンギャルドのパリで過ごし、厳選されたインテリや芸術家だけが集うサークルに属していた。しかしプロコフィエフがソビエト連邦への帰国を決めたことで全てが変わる。最高の栄誉で迎えられたふたりだったが、時がたつにつれスターリン体制に苦しめられるようになり、夫婦関係も悪化する。