トムは児童養護施設に住んでいて、動物が大好き。だからサーカス団と暮らす女の子ラナと出会った日、逃げ出してふたつの夢をかなえるチャンスだと思った。夢とは、世界一魅力的な動物たちのすぐそばにいること、そしてまだ会ったことのない父さんを探しに行くこと。ある日、夢にも思わなかったことが起こる。ライオンたちといっしょに寝ることになったのだ。
ラテン文学研究者のアレックスは、学会に出席するためにニューヨークに飛ぶ。そこで有能でクリエイティブな写真家のジョナスと知り合い、自分が同性愛者であることに気づく。アレックスは教養があり神経症的で、ペダンティックで感受性が極めて強い。ジョナスは美形で、会う者みなが心を動かされる。ふたりの間に愛が芽生え、カップルとして生きることを決める。しかしほどなく、悲劇が彼らを襲う。母親の死でアレックスはバルセロナに戻ることになり、彼を理解しない冷淡な家族や社会に立ち向かうことになる。
「僕たちの中には光にしがみつく者がいる(中略)しかし、ひと思いに命を絶ちたがる者もいる。誰しもそんな地点にぶつかるだろう。暗闇の中、ひとりぼっちで、もう後戻りはできない」ハビエル・ビダル(1979年、セゴビア生まれ)の最初の小説は冒頭で、逆説的な意味での出発点に読者を立たせる。同時にそこで、本作品の主要テーマを垣間見せる。つまり、死、そして死と表裏一体になった人生の変転だ。最初の出来事は、主人公の内省の旅において起きる。