パリはパーティーのようなもの。ベル・エポックの光が、アブサンとアヘンが自由に行きかう自堕落なモンマルトルやピガールの夜を照らしだす。しかし、路地や貧民街から離れたある上品な並木道で、斬首されたムッシュー・ボナンシューの死体が発見される。これといった手がかりも動機も見当たらなかったが、殺されたこの紳士には密かに情熱を傾けていることがあった。自宅の錬金術の実験室にこもり、賢者の石を求めて日々を過ごしていたのだった。
13歳になるまで、ぼくの人生にはなんの苦労もなかった。13歳と30日目の今、じめじめした見知らぬ部屋で、目隠しをされおんぼろの椅子に縛りつけられている。こんなこと、ぼくの年頃のだれにでも起こることじゃないのはわかってる。だけど、みんなはホワイトタイガーの息子じゃない。でも、ぼくはそうなんだ。
ポルベニル村に冬が来て、悪いニュースを運んできた。手紙が少ないため郵便局を閉鎖し、職員を異動させることになったというのだ。山の中でさえソーシャルメディアやeメールやWhatsApp(注:LINE と同種の通信アプリ)が勝ったようだ。村で唯一の郵便配達人であるサラはこの村で生まれた。3人の幼い子どもたちとここで暮らし、近所に住む、80歳になる老女ロサと多くの時間を共に過ごしている。
世界を旅していたテオドシウスおじさんが、とても変わった標本を持って帰ってきた。だれもが絶滅したと信じていた、ドードー鳥の標本だ。あいにくこの哀れな鳥には、多くの敵がいた。ジェームズ・モリアーティの父親が探検家のおじさんの帰還を祝って開いた盛大な歓迎パーティの招待客の数くらい。ジェームズ・モリアーティは活発でもなければ、世界一やさしくもない子どもかもしれないが、なにかに打ち込み始めると、なにがあっても立ち止まらない。
ロンドンは謎と驚きに満ちた街だ。特に、行く先々で問題を探し出してしまう人にとっては。のんびりした休暇になると思いきや……。ジェームズ・モリアーティは大英博物館をおとずれ、さまざまなものと出会う。耳を疑うほどバイオリンがうまい子ども、巨大グモ、忌まわしい過去を持つ建物、正体不明の発明家、世界一大きな食虫植物、牙に強迫観念を持つアイルランド人青年、ロンドンのどまん中にある、入ると出てこられない熱帯のジャングル。人のいいジョン・ワトソンはトラブル続き。
どんな場所にも謎が潜んでいるものだが、秘密の博物館があり、一風変わった教授たちがいるオックスフォードの街ほど、謎だらけのところはない。ジェームズ・モリアーティは、ちょっとでも口実があれば、進んでやっかいごとに巻き込まれる傾向がある。だけど神出鬼没の女の子たち、いんちき学生、なんでも開く鍵束、空気を武器として使う容疑者たちと出会ったとき、やっかいごとが向こうから転がりこんできた。19世紀のいたずらっ子が活躍する、抱腹絶倒の新しいミステリー。
ロブは津波で生き残り、今は屋根の上に住んでいる。白いコルク樫でできた船でトレジャーハンティングをし、ラナにぞっこん惚れている。新しい海の財宝を求めて遠征したときに、だれでもなりたい人に変身できる魔法の石を見つける。この発見で彼の人生はがらりと変わるが、同時にこの世には、見かけ通りのものなど何もないと気づくことになる。
もし親があなたを、友だちからも住む街からも遠い寄宿舎に入れたとしたらどんな気持ちになると思う? そうなったとき、13歳のわたしは、恐れと怒り期待をいっぺんに感じた。カメリアス校の門をくぐったとき、2度と出られない場所に来てしまったような感覚に襲われた。だけどそのあとは、うん、そんなに悪くなかった。ベアやベルトと知り合い、そしてわたしたちはやっかいごとに巻き込まれた。たとえば、寄宿舎で取引しているドラッグの売人を見つけたとか……。アルレーネという最高の友だちができたのも悪くない。
ディアナは毎日学校が終わると、バスで家に帰る。とある午後、すごくハンサムな少年と隣り合わせた。彼は次の停留所で降りなければならず、名前も電話番号も告げあわずに別れる。しかし、ふたりは偶然再会し、ある約束のもとでデートするようになる。ひと月は名前を教えあわず、バスの男の子、バスの女の子と呼び合おうという申し合わせだ。
13歳のナンネル・モーツァルトは、天才作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのお姉さんだ。ヴォルフリ(モーツァルト)はその年ごろのどの子もそうであるように、遊びといたずらが大好きで、大人の世界はよくわからない。パーティは好きだけど、宮廷やお屋敷に招待されるのは好きじゃない。そういうところでは、まるで珍しい生き物のように見られるから。姉さんは弟のことをいちばんよく知っていて、弟が責任と義務感で爆発しそうだと感じると、弟のために素晴らしい世界、リュッケンの魔法の王国を作り出す。