ポルベニル村に冬が来て、悪いニュースを運んできた。手紙が少ないため郵便局を閉鎖し、職員を異動させることになったというのだ。山の中でさえソーシャルメディアやeメールやWhatsApp(注:LINE と同種の通信アプリ)が勝ったようだ。村で唯一の郵便配達人であるサラはこの村で生まれた。3人の幼い子どもたちとここで暮らし、近所に住む、80歳になる老女ロサと多くの時間を共に過ごしている。ロサは、サラや子どもたちが辛い目にあわないため、一番大切な人たちの生活がくつがえされないためなら、なんでもする覚悟だ。だが、一介の老女に何をできるというのか? それは1通の手紙を書くというごくささやかなことだった。70年前から心にしまってあった手紙を……。