細やかな心理描写の11の短編で、クララ・パストールは特異な宇宙を見せてくれる。地理的な位置はあいまいだが、的確な雰囲気のなかに、登場人物の微妙な心理が見てとれる。主人公が子どもの場合は別だが、収録された物語の多くで、主人公が気づかないうちに欲望が生まれて死んでゆく。主人公は外見の落ち着きを保とうとするが、なかなかそうはいかない。流れるような自然な散文とともに、物語の筋の動かし方の巧みさを楽しめる美しい本。ほのめかされ、想像力と感性にゆだねられるすべてが読者を魅了する。
仕事にも結婚にも疲れた新聞記者のルイスは、テキサスのオースティンでの学会に出席する予定である。出張は、人生の唯一の喜びとなっているカミーラとの束の間の逢瀬のアリバイにすぎない。しかし、出発しようとしたとき、カミーラから「もうここでおしまいにして、思い出にしましょう」というメッセージを受け取る。ルイスは落胆し、どうしてよいかわからないままオースティンに行き、大学の文書館にこもり、そこで偶然、ウィリアム・フォークナーが愛人ミータ・カーペンターに送った手紙を見つける。
もし、あなたに対する最大の罰が、自分の星から出ていくことだとしたら? リアムとアリアは想像だにしなかった運命に直面する。一見、普通に暮らしているように見える兄妹ふたりは、故郷の惑星ラインを離れることを余儀なくされる。未知の世界の危険にさらされながら、ふたりは答えを探しに何が何でも生き延びなければならない旅に出る。秘密の中には永遠に埋もれてしまっていた方がいいものもあることも知らずに。
2011年春に政党の閉鎖性に対抗して起こったスペインの若者たちの抗議デモ、15-Mから10年を記念して出版された。物語はデモの1週間前に始まる。しばらく世間から離れて入院し、退院したばかりの主人公のモイセス・マルメロは、勤務していた会社はどうなっているか確かめようと出かけ、最後にデモの参加者が溢れるプエルタ・デル・ソル広場にたどりつく。章を追うごとに、当時のマドリード、そしてスペインの姿の忠実でユーモラスな描写へと変貌していく本書。
ビジャ・ヌエバでは悲しい話が絶えないようだが、毎週月曜日は待ちに待った日だ。ネルソンとヘルソンが本の詰まった車でやってきて、彼らの物語で子どもたちは幸せな気持ちでうちに帰り、太陽は再び輝く。ホンジュラスの実話に基づく作品。
カルメレは獣医学生時代から、野生動物に関わる仕事がしたいとはっきり思っていた。その情熱は冷めることなく、43歳の今、彼女はボルネオ島(インドネシア)でオランウータンの保護と回復を目的とした大規模なNGOを率いている。本書では、自然とともにあった幼少期、学業、野生動物回復センターでの最初の仕事の日々、ボランティアとして働くためにジャカルタに降り立ったこと、そしてゴミの中で棒につながれるひどい生活を送っていた飼育下のオランウータン、ジョジョとの出会いが人生に与えた衝撃について語っている。
かつて義理の兄妹だったルベンとアマリアは、巨大マンションのエントランスでばったり会い、ずっと前から自分たちが同じ建物に住んでいたこと、どちらも自分が人生の主役と感じたことがないことを発見する。自分が傷つき、人を傷つけるのをおそれて、どちらも人が願うままに生きてきた。拒絶されるのを絶えず恐れながら、家族の枠に自分を当てはめようとしてきたルベンと、子どものころから姉妹とはりあってきた、利己主義で嘘つきのアマリア。
ドーゴ、オリビア(友だちからの呼び名はオリ)、ニコはスケートボーダーの仲間たち、通称ターボスケーターズ。彼らを主人公とする、話題になること必至のシリーズ第1巻だ。アクション満載で、ミステリーの味付けもある各巻で主人公たちは新たな冒険を繰り広げる。ドーゴはナイーブで新鮮な視点を持った、物語の語り手。最初の冒険となる本書では、ドーゴ、オリ、ニコの3人が村で開催されるスケート大会で優勝するために熱くなっている。しかし、休まず必死で練習する3人のプランに邪魔が入る……。
メアリー・アニングは幼少の頃から、父に連れられてイギリス南部のライム・リージスの荒磯で化石採集をしていた。大人になっても化石に対する情熱は続き、彼女はやがて研究者の道に進む。メアリーの業績は、当時の科学界でほぼ黙殺されたが、一方でその数々の発見は、草創期の古生物学の発展に大きく貢献する。過去のドラゴン(恐竜)たちの骨を掘り起こすのに彼女が取り除いた石の重さは何トンにも及んだ。
マテオには彼自身の好みがあり、その好みに合わせて遊ぶことを知っている。だが周りの人はマテオがやりたいことよりやるべきことしか頭にない。家族は子供が喜ぶはずだと思うおもちゃをたくさん買い与えるが、当のマテオはそんな家族の期待に押しつぶされそう。しかし、唯一の理解者であるおばあちゃんの助けもあり、マテオは大人がもつ子供の可能性に対する固定概念から逃れ、自由に遊ぶ。