成熟したひとりの女性が、思い出の中で自分の人格の跡を追い求める。時間の経過のもたらした喪失と獲得物をうけいれ、人生に求めることができるものとできないものを見分けることを知る。苦境から自分を救うすべを学ぶ。いない者たちの不在を認める。愛の絶対的価値を信じないが、最後のチャンスを与える。ほかの女性たちの苦悩や恐れを知る。皮肉な息遣いを保つ。そして、孤独のなかに成長し続けるためのはずみを見つける。時には、よきものが私たちを傷つけることがないように風を見張りながら火を焚く。
友人との食後のおしゃべりのように楽しいが、肝臓につきささる鉤爪のような打撃を与える小説。敵から〈カバ〉と呼ばれている、主人公のバシリオは、その相反する性質をいくらかかかえている。119キロの巨体の彼は、そのあだ名を喜んでいる。機会をねらってじっと動かないカバの沈着さは彼のめざすところであり、またカバの獰猛な性質、攻撃的本能、とんでもない知性が彼をひきつける。