友人との食後のおしゃべりのように楽しいが、肝臓につきささる鉤爪のような打撃を与える小説。敵から〈カバ〉と呼ばれている、主人公のバシリオは、その相反する性質をいくらかかかえている。119キロの巨体の彼は、そのあだ名を喜んでいる。機会をねらってじっと動かないカバの沈着さは彼のめざすところであり、またカバの獰猛な性質、攻撃的本能、とんでもない知性が彼をひきつける。だから、快適な隠遁生活を数週間やめて、代表候補アメリア・トマスの選挙キャンペーンに同行しないかという誘いがあったとき、彼の中の獣が伸びをして、動きだした。スペインのあらゆる市町村をまわるあいだ、彼の使命は候補の演説にダイナマイトをこめ、ライバルたちに弁舌でガソリンをかけ、とおりがかりにすべてを燃やすことだった。