David Trueba
ダビド‧トゥルエバ
映画監督と脚本のキャリア以上に、ダビド‧トゥルエバは小説家としての軌跡で、国内外の読者を常に魅了してきた。作品はすでに数か国語に翻訳されている。『Abierto toda la noche(夜通し営業)』 (1995)、現在まで20刷以上を重ねるロングセラー『Cuatro Amigos(4人の友達)』 (1999)、批評家賞最優秀小説賞を受賞し、フランスのメディシス賞の最終候補となった『Saber Perder(潔い敗北)』(2008) 、『Blitz(ブリッツ)』(2015)、『Tierra de campos(草原の地)』、そして最新作の本書まで、小説はすべてアナグラマ社から刊行されている。
亡くなった父親を埋葬するためにダニエルは特別な車で生まれ故郷へ向かう。その車とは霊柩車。運転手はコメディアンさながら、一風変わったおしゃべりなエクアドル人だ。ダニ・モスカとは果たしてどういう人物なのか。彼自身が言うように単にロマンチックな歌を作るだけの男なのかもしれない。しかし貧しい地域で育った子供であることも間違いない。そして人生に往々にしてあるように、ひょんなことから深い絆で結ばれる友と出会う。音楽を生業として旅を重ね人生を謳歌した。それも束の間、放埓行為の古典的3点セット(セックス、ドラッグ、ロックンロール)のせいで親友たちと結成したグループは解散してしまう。危なっかしい不安定な人生を送りながらも願望と現実の狭間で何とか耐えていた。
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文学
草原の地
Tierra de campos
ダビド‧トゥルエバ
David Trueba
MB Agencia Literaria
友人との食後のおしゃべりのように楽しいが、肝臓につきささる鉤爪のような打撃を与える小説。敵から〈カバ〉と呼ばれている、主人公のバシリオは、その相反する性質をいくらかかかえている。119キロの巨体の彼は、そのあだ名を喜んでいる。機会をねらってじっと動かないカバの沈着さは彼のめざすところであり、またカバの獰猛な性質、攻撃的本能、とんでもない知性が彼をひきつける。だから、快適な隠遁生活を数週間やめて、代表候補アメリア・トマスの選挙キャンペーンに同行しないかという誘いがあったとき、彼の中の獣が伸びをして、動きだした。スペインのあらゆる市町村をまわるあいだ、彼の使命は候補の演説にダイナマイトをこめ、ライバルたちに弁舌でガソリンをかけ、とおりがかりにすべてを燃やすことだった。
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