悪は不意に忍び寄ってくる。8月のある寒い夜、そのことをエバンス一家は身をもって経験することとなった。闇の中、娘のサラが二人組の何者かにさらわれ、姿を消したのだ。彼女は生きているのか、刑事アンへロ・モリスと法心理学者ハミレン・ラッソは力を合わせ、時をさかのぼって事件のなぞに挑む。一貫性がなさそうに見える犯罪にむきあうふたりは、犯人が残した手がかりが30年以上前の未解決の謎を指し示していることに気づく。
「マルセリノは作業を止めて立ち上がると、手の甲を額にかざし足元の谷を見つめた。何もかもが金色の光の鈴のようにきらきら輝いていた。7月のあの日も同じようにマルセリノは立ちすくみ、じっと目を凝らしていた。家屋も穀物庫も荷車も夕暮れの濃い藍色に包まれる中、ただ弟から流れる血痕がおがくずを赤く染めていた。彼は弟を傷付けるつもりなどさらさらなかった。空には新たな時代の幕開けを告げるように一番星が輝き出していた。
サラ・イカスパイはあらゆる種類の謎や不可解な出来事を解決するスペシャリスト。読書年齢に合わせた文章にユーモア溢れるイラスト満載の冒険ストーリー。サラ♯イカスパイは天才的な調査能力の持ち主。「私はサラ・イカスパイ。でもイカスパイは苗字じゃないの。スパイは私にぴったりの職業で、素晴らしい冒険を経験できる。で、海が好きだからイカって付けたの。だって、イカは海洋動物の中でも、とても頭が良いから」 ある週末、祖父母と行った山でスキーを覚える一方で、わくわくする謎を解く。
これはとっても特別な蚕、セダフィンのお話。セダフィンは飼育箱のなかでたった一匹、白やグレーじゃない、色とりどりの鮮やかな蚕で、仲間たちの驚きの的なんだ。
見て楽しむ本。見開きページに描かれた絵だけで、緑豊かな場所を楽しく散歩する少年の様子を語る。人生に喩えた物語で、長い道を行き、深い茂みを横切り、奇妙な場所を上り下りして主人公がたどる行程には、見えている通りのものは何もない。好奇心と幻想に満ちた冒険へと誘う1冊。シンプルだが独創性に富む、驚くような輝かしい物語で、何よりも溢れるような豊かな色彩と紙面に感じる筆遣い、細部にこだわりながらも量感のある絵に引き込まれる。予想もつかない結末を迎える視点の遊び。
パワフルで自信に満ちたビジネスマンのアンドレウ・プラット。金、権力、家族、子供…欲しいものは何でも手に入れてきた。そんな彼だが、40歳を過ぎた今、離婚を考えている。この男の魅力に抗える女性はほとんどいないが、ヌリアはその例外のひとりだ。彼女にとってカラ・モントゴは悲しみを癒すためにこれからもずっと訪れるであろう場所。未来を思い描くための静寂の隠れ家であり、過去と現在が絡み合って、ハバネラに歌われているような「ほんの小さな楽園」となるのだ。
ここ数十年、神経科学が発展したことで、人類をして地球上で最も複雑で、自らの本質を問うことができる存在にまでならしめた器官、すなわち脳の働きに関する多くのことが明らかになった。しかし、約1000億個の細胞からなる、この脳という器官は、科学者にとっていまだに謎に満ち溢れた挑戦の場である。国際的にも著名な神経科学者であるファクンド・マネスは本書『Ser humanos(人類)』の中で、脳科学における新発見までの長い道のりや大いなる発展について分かりやすくかつ魅力的に説明した。
フェミニスト的観点から固定観念を退ける作者たちは、「快楽、性行為、エロティシズムがどのように、そして誰のためにあるべきか」といった、ひとつの明白な答えを出すような言説を展開したりはしない。本書には、一般的には規格外かもしれないが、社会に存在する性とエロスの多様性に応えるエロティックストーリー集という点では実にノーマルな性愛文学が網羅されている。これら12の文芸作品のテーマは、性的同意、自慰、スワッピング、性別のあいまいさ、個人の自由、探求、アバンチュール、生涯のパートナーの再発見など。
物語の舞台は、とてつもなく貧しい国の中にある、あまりにも大きな都市の郊外。そこは最も強い者、最も嫌なやつが支配する、国境も法律も文化もない世界だ。グリンゴとチュエコというふたりの少年は、そんな空腹、退屈、麻薬がわりの接着剤しかないところに暮らしている。友情だけが、おそらく人生がふたりに与えた唯一の贈り物だ。ごろつきに囲まれ、性的暴力や非人間的な生き方が日常的な彼らは、ある日、慣れ親しんだ世界との関わり方である犯罪に身を投じることになる。
主人公ディエゴがこれまでの自分とは別の存在になるためにやってきた町ダブリン。だが、新たな友人と憂鬱さのせいで酒に溺れ、一生住み続けることができないことも分かっている。ディエゴの心の中に潜むいまだ実行していないある種の犯罪は、彼を過去の面々の元に押し戻そうとしていた。すなわち、自らの運命を受け入れ、人目につかずに逃げおおせるバルセロナへと。その街で彼は、恐怖に打ち勝つために本能的にさまよい続けるが、夜、バル、そして彼と同じように漂流の旅をする一匹狼の群れの中にいても、孤独が消えることはない。