マリア・ロデリック(お婆さま)、マリア・マジー(奥様)とマリア・コスタは約1世紀の間プリンシパル家を取り仕切ってきた。プリンシパル家はアバディアのブドウの産地の中心にあるポウス村最大の旧家だ。祖母、母と娘の3人が一連の変革を行ってビジネスを確立し、周辺のブドウ園を繁栄させてきた。しかしプリンシパル家の歴史には闇がある。1936年7月18日に元親方が殺されたのだ。内戦の後、ある警部がこの事件を解決しようと捜査を始めると、一族の秘密と、気質と情熱と権力という節で結ばれた網が浮かびあがってくる。
家族と週末を過ごしていたベビラクア曹長は、レバンテのある場所で女性町長の死体が発見されたという知らせを受ける。町長の夫がかねてから妻の失踪を届けていたのだが、死体はビーチで観光客に発見されたのだった。ベビラクアと部下たちが到着し、捜査にとりかかった時には、既に判事が死体を引き上げ、最初の方策は講じられ、葬儀の準備が行われていた。現場はごたごたし、被害者についてありとあらゆる噂が広まっていた。
この波乱万丈のスリラーはワインの世界が舞台。ワイン界に関係がある複数の殺人の捜査が、ひとりの女性警察官に委ねられる。あるたれこみ屋との出会いにより彼女は、だれが敵かわからないまま勝つしかないレースに追い込まれる。ロシアマフィア、盗掘をする女性考古学者、バルセロナ大聖堂の文書係、謎めいたブロンド女性、旧ナチ将校、優しい眼差しの殺し屋、大酒飲みのワイン醸造家といった面々が、100年以上前に醸造された1本のワインに隠された秘密をめぐって交錯する。
内陸部のある村で最も裕福な一家には奥様、その夫、幼いふたりの子ども、奥様の母親と使用人のアマリアがいる。彼らが暮らす邸宅では一見すべてが完璧だが、中身もそうとは限らない。奥様の名はコンスエロ。非常に貧しい家庭に生まれた美貌の若い女性。娘と自分の将来を確かなものにしようとした母親が見つけてきた相手と結婚したものの、コンスエロは妻である自分の立場に不安と恐れで一杯になっている。スペイン各地のビーチの道徳性に関する会議に出席する夫が、コンスエロと子どもたちを地中海のある町に連れていく。
無のただ中にある島、ア・カエリに、ある日、翼が片方しかない天使をのせた船がたどりつく。普段ほとんど人がやってこない島の住民たちは、そのような人物の到来に好奇心をかきたてられる。やがて、その人物は名前をマンスールと言い、背中にあるのは翼ではないかもしれないということがわかってくる。
ガリシア生まれの若い女性教師は夫と別れたばかり。気分を一新するためカナリア諸島でバカンスを過ごすことにする。『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を読みふけり、魅力的で裕福なロシア人の実業家と出会って情熱的なロマンスが芽生えると、彼女は自分の空想の主人公になる。こういうことは小説の中でしか起きないと信じている全ての女性読者に捧げる願望と情熱の物語。待ち望んでいたカナリア諸島でのバカンスに向け飛行機に搭乗するとき、クリスティーナは壊れてしまった結婚生活を忘れることしか考えていなかった。
作者自身が患う多重人格障害を描いた物語。自分自身や家族のエピソードと、フィクションの要素や夢想を混ぜ合わせてしたてられた小説だが、フィクションと現実は、多重人格そのもの同様、どちらがどちらと見極めがたく重なりあっている。20世紀の第二共和政からモビーダ(民政移行直後の時代)にかけてのスペインを見渡しながら、すぐれた語り口で限りなく誠実に、多重人格障害の苦しみを一人称で、だが希望のメッセージをこめて描く。
ミレナの美しさが仇だった。若い頃から性の奴隷となってきた彼女は、パトロンである通信業界の大物が、彼女との情事の最中に心臓発作で死んだとき、逃亡を試みる。不安な逃亡の最中に、アスレスと名乗る正義漢の3人組に出会う。ジャーナリストのトマス・アリスメンディ、政治家のアメリア・ナバロ、保安の専門家ハイメ・レムスである。彼らは彼女を解放しようするが、ミレナは黒い手帳に書き込まれた謎をかかえて怯えている。その謎は、救いと同時に復讐を示唆しているからだ。
以前はのどかだった場所にミストラル社が設置を始めた風力発電の近代的な風車。その翼で首を吊った女性の死体が発見される。それは同社のエンジニア、エステルだった。殺人それとも自殺? リカルド・クピード刑事は依頼を受けて捜査に乗り出すが、たどりついたのは夢にも思わない場所だった。風力発電所は争いの種だった。多くの住民はここぞとばかり土地を売却したが、環境保護に熱心な夫婦は売却を拒否するばかりか、この事業を台無しにしてやると脅す。発電所では次々と嫌がらせや襲撃が起こる。
世界で最もきれいな肌の持ち主は、エスキモーと修道女だとする科学的研究がある。いつまでも美しくありたいという願いは今に始まったことではない。本書では、文化も時代も異なる男女が、いかに努力して自らの美しさを磨き、老化の時計を止めようとしてきたかが語られる。著者は何世紀にもわたる人類の歴史の中で美とはなんであったかを分析しつつ、サロメ、ルクレツィア・ボルジア、バートリ伯爵夫人、皇后シシィといった伝説の美女の美容の秘密を解き明かす。