主人公であり、語り手でもあるエルクレス・デガルは、アートで社会を変えようという風変わりな試みに着手する。本書は、彼と行動を共にした友人たち(写真家、女優、カジノのクルピエ)の人生の物語である。エルクレスの夢と不眠が、巧みな横領工作と絡み合うが、この工作は、主人公にとって昔の女神、いくつもの謎を抱えた女性の突然の出現で危うくなる。作者アルバロ・オルモが輝かしい初めての小説で読者に挑む。挑発的で、野心と好奇心にあふれた作品。
ニコラウ・コマグラン・セルクは詩人ニック・セルクとして名を馳せている若者。文学の道を志すが挫折し、マジョルカに戻り、叔父を手伝ってインディラ・ホテルで働き始める。祖父の時代から一族が所有する少々さびれたホテルである。こうして一転、踏み込んだ新たな世界にあったのは、昔の亡霊たちと、恋と成功のライバルになる人物の家族の幻惑だった。本書はニックとナタリアの狂わんばかりの恋と発見の物語だ。2人の関係は、過去や秘密や不満、運命や嘘に彩られている。
2011年第13回デスニベル文学賞受賞作。ジョンはバスク人の料理人で短気な登山家でもある。家族に大問題が生じたあと逃げ出してチベットに行く。古地図好きなチベットの僧ドルジェは1717年にフランスのイエズス会士が作成した、奇妙な注釈つきの地図を見つける。カルロタはずっと人生から逃げてきた、キューバ生まれのはちゃめちゃな地図作成者。サムはいつもギリギリのところで生きようとする米国生まれの登山家でガイド。本書はこうした人々の物語である。