ニコラウ・コマグラン・セルクは詩人ニック・セルクとして名を馳せている若者。文学の道を志すが挫折し、マジョルカに戻り、叔父を手伝ってインディラ・ホテルで働き始める。祖父の時代から一族が所有する少々さびれたホテルである。こうして一転、踏み込んだ新たな世界にあったのは、昔の亡霊たちと、恋と成功のライバルになる人物の家族の幻惑だった。本書はニックとナタリアの狂わんばかりの恋と発見の物語だ。2人の関係は、過去や秘密や不満、運命や嘘に彩られている。自分自身を受け入れることの難しさ、汚職や喪失の痛み、慰めの必要性、限界があることによって生じる悲劇についての小説である。