エイハブ船長は、執念の対象であった白鯨を探しに出発する。鯨を求めて7つの海を渡るが、なんの手がかりも得られない。冒険の途中で彼を待ち受けるのは、氷山やクラゲの大群、沈没船、食人種の洞窟……、だが敵の痕跡はない。疲れ果てた船長は、家に帰ってのんびり暮らそうと決意するが、鯨が見つかるのはきっと、そんなときなのだ。どの絵にも必ず鯨がいるのが読者にはわかるが、執念に取りつかれたエイハブ船長の目には入らない。ハーマン・メルヴィルの名作に捧げたオマージュである本書は、人生の意味探しについての巧妙なメタファーでもある。