経済危機で窮地に追い込まれた35歳の作家が、都会を離れ、カタルーニャ南部の小さな村の実家に戻る。そこで自分の故郷を新たに発見をしつつ、自分がそこの人間であるが異邦人でもあることに気づく。地元の祭りのオープニングのスピーチを頼まれ、そこの景観や歴史と自分との関係をどのように語ればよいのかと考えこむ。タバコを吸いながら歩き、田舎と正反対の都会の生活について、ルーツの重みについて、名誉のアイロニーについて思いめぐらす。彼にとってこのような名誉など実のところ、失敗の証明にほかならないのだ。
クララは時々衝動的な行動をとり、それがネガティブな結果を招くことがある。妖精チックはいつもそばにいて、クララが間違いを見定めて、よく考えるのを手伝ってくれる。つまり将来同じような状況に陥らないよう考えさせてくれる。この物語のテーマは、自尊心と尊重と衝動だ。妖精(チック)とトロル(トロック)という架空の人物が、子どもの行動を見守り、よく考えさせるコーチとして登場する。そして、子どものネガティブな行動が起こるたびに、熟考するよう主人公を導く。
よい妖精がついに死に絶える世界を描いた、アクションと冒険に溢れるファンタジー小説。鏡の王都とは、テラリンデ王国の首都であり中心地。この国の妖精たちは、人間が存在するとは思っていない。この古都は「眠れる女王戦争」の間、決定的な役割を果たした。数年前のその血みどろの戦争によって、王国には危うい平和と数々の恨み、不安定な王座が残された。そんな王国で、ニカシアとドゥハルは長年権力を巡っていがみあっている。
数年にわたる家族の物語。割れたり、どこかに行ってしまったり、他の目的に使われたりしている食器をあらためて数えると、生きてきたあいだにあった喪失、発見、変化が見えてくる。著者は、2012年にバルコ・デ・バポール賞、2011年にインベンシオネス児童文学賞を受賞している。
ギリェはとても楽しい男の子。だけどそれは家のなかだけで、なじんだ環境の外に出ると臆病で内向的になる。楽しい誕生パーティも、仲良しが行けないとギリェにとっては悪夢になる。そんなときトロルのトロックが現れ、間違いを見定めてよく考えさせてくれる。つまり将来同じことに陥らないないよう導いてくれるのだ。この物語のテーマは自尊心と臆病さだ。社会的な行事は子どもの姿勢次第で、楽しくもなるし退屈にもなる。
ジャーン! アグス・ピアノラを紹介します。そそっかしくてちょっと図々しい男の子だけど、いいやつだよ。部屋を片づけなきゃならないのはわかってるけど、いつもママにいわれるまで手をつけない。だって、なかなか始めるチャンスがないんだ。散らかった部屋ではボールやらゲームやら作文やら、いろんなものがなくなるけど、代わりに別のものが見つかることもある……。
マールとアレックスはきょうだい。あいにく生まれた日が364日しか離れていないので、なんでもかんでも一緒だ。学校もクラスも遊び仲間も。左腕の母斑まで一緒で、これにはたくさんの伝説がある。すれ違っても、注意をひくような子たちじゃない。だけどふたりには、難しい謎にもけっして怖気づかないという秘密がある。
6歳以上の子ども向け絵本。様々なバージョンのある口承伝説を下敷きにしている。死も人生の一部だということを子どもたちに教えてくれる本。ジャックの母さんは重い病気で、もはや生よりは死のほうに近づいている。浜辺で泣いていたジャックは、母さんを迎えに来た死神と出会う。そこでジャックは死神をだまし、瓶のなかに閉じ込めて素早くふたを閉めることに成功した。それ以来人も動物も、植物も死ななくなる。世界は大混乱に陥り、ジャックは母さんから、死神を外に出すよう諭される。
ルカスは、自分は飛ぶために生まれてきたのだと思いこんでいた。飛行機を見て、あらゆる種類の翼を作ろうとした。クリスマスプレゼントに、「飛べること」をお願いさえした! だけど、どれもうまくいかないようだった……。そんなある日、夢をかなえる方法はほかにもあると母さんがいって、ルカスに1冊の本を手渡した。その日、いつのまにかルカスは飛び始めた……。
1940〜50年代のスペイン、農家が点在する、マエストラスゴのある村で展開する小説。一帯の森林にはマキ(反フランコゲリラ)が潜む。その家の娘のテレサは物心両面からマキのゲリラに加担しているが、夫を治安警察に殺された母親は、そんな娘の行動に気をもんでいる。末息子が語り手となり、秘密と暴力に満ちた村の状況を明らかにしていく。テレサと親しいマキのゲリラは、治安警察のスパイだった。それがきっかけで、ある誤解から銃撃戦となる。一家はゲリラと治安警察との戦いによって翻弄され分裂させられる。