本書は父親と息子(テオ・アバド、戦場レポーター、本書の語り手)の愛情の物語であると同時に、孤独な女たちと、不当な武力紛争から帰還した英雄たちとの愛情の物語である。さらには、アンティゴネーとイーピゲニアというギリシャ文学の神話的登場人物に対するオマージュでもある。アンティゴネーが兄を埋葬しようとするように、ジュディット(この小説の主人公)は60年代にフランコ体制に殺害された両親の遺体を見つけて埋葬したいと思っている。
バスクのあるテロリストが25年の刑期を終えて出獄する。彼が服役中、組織の幹部は政府を相手に戦闘中止の交渉を進めていた。出獄した男は昔の仲間に失望して単独で動くことにし、カタルーニャのリポリェー山中の村に身を潜めて新たな襲撃を準備しようと決心する。彼は名を伏せて隠れ住むのだが、村にはかつて村人同士を対立させた古傷があり、やがてそれが暴力となって噴出する。彼はそこで、自分の大義への忠誠を貫くべきか、無垢の人を護るべきか、選択をせまられる。
バスクのあるテロリストが25年の刑期を終えて出獄する。彼が服役中、組織の幹部は政府を相手に戦闘中止の交渉を進めていた。出獄した男は昔の仲間に失望して単独で動くことにし、カタルーニャのリポリェー山中の村に身を潜めて新たな襲撃を準備しようと決心する。彼は名を伏せて隠れ住むのだが、村にはかつて村人同士を対立させた古傷があり、やがてそれが暴力となって噴出する。彼はそこで、自分の大義への忠誠を貫くべきか、無垢の人を護るべきか、選択をせまられる。
王子なのか詐欺師なのか? メキシコのアステカ族の王モクテスマの最後の子孫の奇想天外な物語。16世紀にモクテスマの娘のひとりがスペイン人貴族に拉致され、ピレネー山中の人里離れた村に連れていかれた。そこで男児を生んだことが、21世紀まで続く狂気の血統の始まりとなる。この話に魅せられた語り手は、アステカ王女と息子の子孫である、バルセロナ上流階級の男、キコ・グラウのとても本当とは思えない実話を発見する。
ダニ・サンタナに何があったのか? ジャーナリストのダニは殺されかけ、今は体の上から下までギプスに覆われている。病院という独自の法則を持つ世界で、彼は車椅子生活を送ることになったラグビーのユースチームの選手グラトゥと親しくなる。落ち着きがなく、おまけにハッカーでもあるグラトゥは、保健システムの破たんの原因調査にサンタナを巻き込む。その頃、世界有数の億万長者、メキシコの実業家ロベルト・M・ファウラがバルセロナに到着する。
ラモネはフランス南部に暮らすジプシー。カタルーニャ地方のアンプルダンのとある町の郊外で中古トラックを買い、自分が属するジプシー部族マノウチェ族伝統の放浪生活をとりもどそうと旅に出る。喜びと悲しみ、冒険や想定外の出来事が待ち受けているこの危険な旅には、ある逃亡が潜んでいるのだが、家族や自分のルーツとの和解の試みでもある。魅力とユーモアと冒険に満ちたロードムービー。
ノラは40歳になる既婚女性で、ある秘密を隠している。彼女は飛行機の機上でナチョという若い生物学者と知り合い、初めて不倫をする。この出会いから依存と情熱のゲームが始まり、ノラはそこから次の展覧会のための絵を描きあげていく。従来型の結婚に感情を捕らわれている女性の愛、官能、そして性欲への目覚めの旅を描いた小説。ノラは他人が欲することでなく自分が欲することをすることを学ぶ。「あなたが求めることは何でもする」から「私が求めることは何でもする」に至る道のりである。
主人公であり、語り手でもあるエルクレス・デガルは、アートで社会を変えようという風変わりな試みに着手する。本書は、彼と行動を共にした友人たち(写真家、女優、カジノのクルピエ)の人生の物語である。エルクレスの夢と不眠が、巧みな横領工作と絡み合うが、この工作は、主人公にとって昔の女神、いくつもの謎を抱えた女性の突然の出現で危うくなる。作者アルバロ・オルモが輝かしい初めての小説で読者に挑む。挑発的で、野心と好奇心にあふれた作品。
ニコラウ・コマグラン・セルクは詩人ニック・セルクとして名を馳せている若者。文学の道を志すが挫折し、マジョルカに戻り、叔父を手伝ってインディラ・ホテルで働き始める。祖父の時代から一族が所有する少々さびれたホテルである。こうして一転、踏み込んだ新たな世界にあったのは、昔の亡霊たちと、恋と成功のライバルになる人物の家族の幻惑だった。本書はニックとナタリアの狂わんばかりの恋と発見の物語だ。2人の関係は、過去や秘密や不満、運命や嘘に彩られている。
2011年第13回デスニベル文学賞受賞作。ジョンはバスク人の料理人で短気な登山家でもある。家族に大問題が生じたあと逃げ出してチベットに行く。古地図好きなチベットの僧ドルジェは1717年にフランスのイエズス会士が作成した、奇妙な注釈つきの地図を見つける。カルロタはずっと人生から逃げてきた、キューバ生まれのはちゃめちゃな地図作成者。サムはいつもギリギリのところで生きようとする米国生まれの登山家でガイド。本書はこうした人々の物語である。