王子なのか詐欺師なのか? メキシコのアステカ族の王モクテスマの最後の子孫の奇想天外な物語。16世紀にモクテスマの娘のひとりがスペイン人貴族に拉致され、ピレネー山中の人里離れた村に連れていかれた。そこで男児を生んだことが、21世紀まで続く狂気の血統の始まりとなる。この話に魅せられた語り手は、アステカ王女と息子の子孫である、バルセロナ上流階級の男、キコ・グラウのとても本当とは思えない実話を発見する。妄想とペテン、さらに自分の血統がもたらす歴史的責任のはざまでキコ・グラウは皇太子を名乗り、貴族の称号を欲しがるうぬぼれ成金たちをペテンにかけていた。最後にグラウはスペインから逃亡し、メキシコの密林にある怪しげな村に隠遁する。そこの住人達だけが、彼とスペイン征服前の王族との結びつきを認めるのだった。