彼女は、親友の一番下の妹。黄色が大好きで、思うままに星を線で結んで星座を描き、彼女独自の星空を創りあげていた。彼は、革ジャン姿の反抗的な少年で、彼の胸をかき乱すあれこれをボールペンで描いていた。ふたりは共に一時代を駆け抜け、思い出を作り、唇がほとんど触れそうなくらい近くにいることもあるほど、ずっとお互いをとても必要としていた。
クーデターの企てと、新共和制確立に向けて機運が高まり、アルフォンソ13世の王政が揺らいでいた不安定な激動の時代。ホアキン・コルドバは、友人マテオから至急の呼び出しを受ける。ホアキンをトレド特有の霧が迎え、その霧は古都の栄華を覆い隠すように刻々と広がっていく。ホアキンは、タホ川の河畔で起きる一連の嫌な出来事に少しずつ巻き込まれていく。両目をえぐり取られた何人もの売春婦の死体が連続して発見されるが、誰もそのことを気にしていないようだ。