1971年初頭から現在までの、ふたりの若い女性の人生をたどる。ひとりはラモナ・マルケス。革命家に捨てられたとき、妊娠していた。もうひとりはミレイア・フェレル。トマス・フェレルという男の娘である。トマスは「記憶と自由協会」の設立者で、国外追放者の記憶を留めるために闘っている。ミレイアは潜入中の国家警察官マヌエルと結婚するが、性暴力を避けるため身を潜めなければならなくなる。
自分の人生を300語にまとめることが出来る者がいるだろうか? アンドレス・バルバのこの空想的な小説の主人公は科学者のマルコス。母親が亡くなった後、妻と、複雑な政治歴を持つ引退したコメディアンの義兄弟とが初めてクリスマスに集ったときも、彼はずっとこの不可能なことについて頭を悩ませ続けていた。いつもながら個々人の密やかな空間を描き出すことに長けた作者は、本書でアイデンティティー、家族、ユーモア、願望、他人を真に発見した驚きについて語る。
経済危機下のマドリード。夜は「バールの壁にぶつかって砕けた挫折した感情と夢と情熱の場」である。30代というもうひとつの危機を目前にした登場人物たちが、自分の道を探し求める。主人公の女性は行政訓練校に通う、60年代を懐かしむ作家で、つましい暮らしをしながら世界を変えようと目論んでいる。その友人には、唯一の解決法は光と闇との激しい戦いで全てを破壊することと考える元学生、美貌が却って仇になっている失業中の女優、 「持続可能性フリーク」のばりばりのIT技術者、好奇心旺盛で野心家の成金などがいる。
本書は父親と息子(テオ・アバド、戦場レポーター、本書の語り手)の愛情の物語であると同時に、孤独な女たちと、不当な武力紛争から帰還した英雄たちとの愛情の物語である。さらには、アンティゴネーとイーピゲニアというギリシャ文学の神話的登場人物に対するオマージュでもある。アンティゴネーが兄を埋葬しようとするように、ジュディット(この小説の主人公)は60年代にフランコ体制に殺害された両親の遺体を見つけて埋葬したいと思っている。
バスクのあるテロリストが25年の刑期を終えて出獄する。彼が服役中、組織の幹部は政府を相手に戦闘中止の交渉を進めていた。出獄した男は昔の仲間に失望して単独で動くことにし、カタルーニャのリポリェー山中の村に身を潜めて新たな襲撃を準備しようと決心する。彼は名を伏せて隠れ住むのだが、村にはかつて村人同士を対立させた古傷があり、やがてそれが暴力となって噴出する。彼はそこで、自分の大義への忠誠を貫くべきか、無垢の人を護るべきか、選択をせまられる。
バスクのあるテロリストが25年の刑期を終えて出獄する。彼が服役中、組織の幹部は政府を相手に戦闘中止の交渉を進めていた。出獄した男は昔の仲間に失望して単独で動くことにし、カタルーニャのリポリェー山中の村に身を潜めて新たな襲撃を準備しようと決心する。彼は名を伏せて隠れ住むのだが、村にはかつて村人同士を対立させた古傷があり、やがてそれが暴力となって噴出する。彼はそこで、自分の大義への忠誠を貫くべきか、無垢の人を護るべきか、選択をせまられる。
王子なのか詐欺師なのか? メキシコのアステカ族の王モクテスマの最後の子孫の奇想天外な物語。16世紀にモクテスマの娘のひとりがスペイン人貴族に拉致され、ピレネー山中の人里離れた村に連れていかれた。そこで男児を生んだことが、21世紀まで続く狂気の血統の始まりとなる。この話に魅せられた語り手は、アステカ王女と息子の子孫である、バルセロナ上流階級の男、キコ・グラウのとても本当とは思えない実話を発見する。
ダニ・サンタナに何があったのか? ジャーナリストのダニは殺されかけ、今は体の上から下までギプスに覆われている。病院という独自の法則を持つ世界で、彼は車椅子生活を送ることになったラグビーのユースチームの選手グラトゥと親しくなる。落ち着きがなく、おまけにハッカーでもあるグラトゥは、保健システムの破たんの原因調査にサンタナを巻き込む。その頃、世界有数の億万長者、メキシコの実業家ロベルト・M・ファウラがバルセロナに到着する。