日本市場向けに専門家が選んだスペインの新刊書籍をお届けします。
今回は以下の専門家の方々に選んでいただきました(あいうえお順/敬称略)
内田剛(三省堂書店) / 小澤大介(トランネット) / 田中絵里(ポプラ社) / 永易三和(原書房) / 野谷文昭(名古屋大国語大学教授・東京大学名誉教授) 各書籍のレポートを担当したのは以下の方々です(あいうえお順/敬称略) 青砥直子 / 宇野和美 / 小原京子 / 柏倉恵 / 佐藤晶子 / 嶋田真美 / 高際裕哉 / 棚瀬あずさ / 長神末央子 / 村田名津子 / 安田晶 / 横田佐知子 / 吉田恵 / Amadeu Branera
無のただ中にある島、ア・カエリに、ある日、翼が片方しかない天使をのせた船がたどりつく。普段ほとんど人がやってこない島の住民たちは、そのような人物の到来に好奇心をかきたてられる。やがて、その人物は名前をマンスールと言い、背中にあるのは翼ではないかもしれないということがわかってくる。
世界で最もきれいな肌の持ち主は、エスキモーと修道女だとする科学的研究がある。いつまでも美しくありたいという願いは今に始まったことではない。本書では、文化も時代も異なる男女が、いかに努力して自らの美しさを磨き、老化の時計を止めようとしてきたかが語られる。著者は何世紀にもわたる人類の歴史の中で美とはなんであったかを分析しつつ、サロメ、ルクレツィア・ボルジア、バートリ伯爵夫人、皇后シシィといった伝説の美女の美容の秘密を解き明かす。
1970年、スペイン。ダルマシオの運命は古紙回収作戦の初日から悪い方へと向かいだした。これが恐るべきブラス先生の好感度を少しでもあげて、無事学年を終える最後のチャンスだというのに。しかしどこかうまく行かず、我らがヒーローは毎年夏に訪れるカラロチャに来てもその悩みが頭から消えなかった。そして驚くべき結末を迎える。「よくないね、坊主、良くないことだよ」
居心地がよくもあり不愛想でもある都会と、必要性と愛情で辛うじて繋がっている家族、そして、特別な瞬間の素晴らしい女性の眼差しを描いた小説。何度も失敗した末に、アマリアは65歳の今、漸く夢をかなえた。それは家族全員揃って大晦日の夜を過ごすことだ。アマリアが持ち前の陽気さと献身を発揮して、目に見えない糸の網を紡ぎ、いかに家族を結びつけ守っていったか、口を閉ざす者たちの間をつくろい、ある者たちは将来へと導いていったかを、ひとりの母親が語る。心に強烈にやきつく夜になることは分かっていた。
ジョルジュ・ミエはフランスの出版社ラ・フォルチュの依頼で大衆向けの物語を書いている。ある日担当編集者から、15年前の1925年夏、観光客でにぎわうビアリッツを揺るがした悲劇について「堅い」小説を書くようにとの依頼を受ける。地元の若い女性の死体が桟橋の金属の輪に縛りつけらて発見されたという事件だ。ジョルジュは現地に赴き、30名前後の人たちに話を聞く。彼らは様々な社会階層に属しているが、なんらかの形で被害女性と面識があった。