日本市場向けに専門家が選んだスペインの新刊書籍をお届けします。今回は以下の専門家の方々に選んでいただきました(あいうえお順/敬称略)
金関ふき子(編集者) / 兼森理恵(丸善・丸の内本店)/ 豊崎由美(ライター、書評家) / 野谷文昭(東京大学名誉教授・スペイン語文学者) / マヌエル・アスアヘ=アラモ(イングリッシュエージェンシージャパン)
各書籍のレポートを担当したのは以下の方々です(あいうえお順/敬称略)。青砥直子 / 井原美穂 / 宇野和美 / 潤田順一 / 小原京子 / 柏倉恵 / 金子奈美 / 嶋田真美 / 高際裕哉 / 高部良 / 棚瀬あずさ / 長神未央子 / 宮崎真紀 / モンセ・マリ / 安田晶 / 矢野真弓 / 横田佐知子 / ルベン・バレナ・クレスポ
天才実業家か、夢想家か、それとも疲れを知らない熱血ビジネスマンか? そのすべてが当てはまり、それを凌駕するのがアマンシオ・オルテガ――ザラ、マッシモ・ドゥッティ、オイショ、ベルシュカなど数々のファッション・ブランドを傘下に持つインディテックス・グループの創業者である。そのオルテガが、これまでの人生やビジネスについて初めて書物のなかで語った。21世紀のグローバル・ビジネス・シーンで、スペイン人として最も成功している実業家のひとりであるオルテガの唯一の評伝。
Cròniques de la veritat(隠された真実クロニクル)はカルデルスの小説の中でカギとなる作品であり、スペイン内戦後の読者にとって、すばらしい作家の登場であった。カルデルス独特のユーモアと幻想は年月とともに強くなり、深くなり、あいまいさを増していった。そのあいまいさはエドガー・アラン・ポーから、ルイジ・ピランデルロ、マッシモ・ボンテンペッリを経てフランツ・カフカにつながる幻想文学をいつもとりまいていたあいまいさである。
本書は、多くの片隅が認められる建造物だ。我々を金縛りにする恐れと不安の片隅に、我々を破壊しかねないやむにやまれぬ衝動の片隅。だがそれだけではなく、ゲームの喜びの片隅、持っているとは思わなかった、自分を大きくする内側の力を見つける片隅もある。ダビッド・モンテアグードが、書かずにいられなかった題材に立ち返った、非常にボルテージの高い短編集。読者は心をつかまれ、自分の姿をそこに認めるだろう。
ローラは将来有望な小児科医、39歳。恋人と別れたばかりだ。母親願望によって、最近自分の人生の意味に疑問を持ち始めている。診療で、ガンビア人で彼女より若く4人の子持ちのアミナタに会う。移民で、専業主婦。読み書きはできないが、観察眼のある誇りに溢れた女性で、自分が教えられてきた主義や伝統に疑問を持ち始めている。多分それは長女ビンタとのとげとげした言い争いが原因かもしれない。
もうそれほど若くない作家志望の男。日々のルーチンと生活の糧を得る必要性から夢はあきらめざるを得なかった。ある日彼は、自分が若い頃に書いた古い原稿が盗作されているのを見つける。彼自身でさえ信じられない事を、他人に信じてもらうにはどうすればいいのか? 盗作の容疑者が150年以上前に亡くなった作家なら、事はとりわけ難しくなる。この小説は、文学の世界に深く入り込もうとする人々の欲求不満と苦難を読者に語りかけると同時に、文学の影響力、インスピレーション、そして盗作について考察する。