日本市場向けに専門家が選んだスペインの新刊書籍をお届けします。今回は以下の専門家の方々に選んでいただきました(あいうえお順/敬称略)
入谷芳孝(岩波書店) /桜井志賀子(学研ホールディングス)/ 高木和子(インタースペイ) / 野谷文昭(東京大学)/ 宮崎真紀(翻訳家)
各書籍のレポートを担当したのは以下の方々です(あいうえお順/敬称略)。青砥直子 / 井原美穂 / 宇野和美 / 小原京子 / 柏倉恵 / 児玉さやか / 嶋田真美 / 高木菜々 / 高際裕哉 / 田中恵 / 長谷川晶子 / 宮崎真紀 / ハビエル・フェルナンデス=サンチェス / 村田名津子 / モンセ・マリ / 安田晶 /八木麻貴子 /矢野真弓 / 横田佐知子 / 吉田恵
1941年、スペインのエストレマドゥラで起きた犯罪がアルカラ家の家族3代と、40年間彼らと関わりあった人々に影響をもたらす。陰謀、誘拐、殺人、拷問、男性から女性への暴力などをもりこんで、小説は展開する。著者は、ルポルタージュ的かつ軽快な文体で、起こった出来事を語り、登場人物ひとりひとりの心理に入り込みながら、少しずつ双方の人々を絡み合わせていく。その結果、感情と遺恨、愛と憎しみ、野望と苦悩、偽善ととりわけ罪悪感が渦巻く素晴らしい推理小説となった。
地下鉄のトンネル工事を進めていた掘削会社の責任者である若きエンジニアが、忽然と姿を消した。これが、私立探偵フェルミン・エスカルティンが立ちむかう、身の毛のよだつ事件の始まりとなる。大学教員から探偵に転身したフェルミン・エスカルティンは、フェルナンド・ララナのミステリーシリーズの主人公。『トンネル掘り』は中でも、鋭い皮肉と真に迫る恐怖が冴えわたる、一度手にとると最後まで一気に読まずにいられない秀作ミステリー。
ダビッドは、ホセ・マリア・プラサの冒険ミステリーシリーズLos Sin Miedo(恐れを知らぬ者たち)の主人公である若者たちのひとり。祖父の家で見つけた古い手稿で読んだ怪談を、いつも(場違いなときでさえ)仲間たちに話している。幸い、いつも最後まで話すことができない。
本書はフラメンコの世界に入ってみたいと願う人を対象にしているが、フラメンコ通の人たち向けでもある。全てのフラメンコ・ファンのために、本書の中には、歴史を通じての曲種の様々な分類、フラメンコ民謡の形式、アンダルシア方言の特徴、フラメンコの詞によく見られるジプシー用語、様々な曲種の韻の踏み方及びそれらの研究について取り上げられている。また、フラメンコがどのように生まれたかについての興味深い理論や、フラメンコ芸術の形成に、ある意味、影響を与えたアンダルシアの歴史についての基礎知識も取り上げる。
エルサ・プンセットが明瞭でシンプルな言葉で述べるように、生活や人間関係を変えていくには「私たちが考えるほど、多くのものは必要ない。私たちを取り巻く現実を理解し対処していく助けとなるものは、軽いリュックひとつに十分収まる」。
他者を理解し、感情の宇宙でどうにかうまくきりぬけていきたい人に必携の書。