「彼らは我こそが作家だとうぬぼれてここにやって来たけれど、帰るときは自分たちが登場人物になっているわ」と、若いペルー人作家モナ・タリレ=ビルネは思う。カリフォルニアの麻薬とセックスの深みにはまりつつある中で、モナは権威ある文学賞Basske Wortz賞にノミネートされた数人の小説家たちと共にスウェーデンのとある村に降り立つ。北極圏の真夜中ちかく、文化的居住空間の境界線にあるその極限の地で、不思議な説明のつかない暴力の痕跡を見つける。
悪魔ドカルは自分の山を下りて、ナルタニスの全ての種族を支配するため、形ある肉体を持とうとする。そのためには、手に入れられる限りのあらゆる手段、怖れと憎しみ、愛、勇気、希望までも駆使するだろう。ナルタニスの中で進化した3つの種族の様々なキャラクターが彼に抵抗する。賢く、能力と観察力があり、恐るべき戦士で優れた追跡者のオオカミ。他のどんなことより美しさを重視し、物をつかむことができる尾を持ち、とても器用で、隠密行動が得意なトゥリド。
テレビの司会者ミネルバ・ピケロのデビュー作。コラは、生涯で一番愛した恋人との思いがけない別れのあとに陥った暗闇から抜け出し、心機一転を図ろうとしていた。セックスが、新しいアイデンティティに向けてのイニシエーションの儀式になるだろう。体験し、出会いなおし、許すという未知の世界。一方、バレンティナは暗い秘密とトラウマの過去から逃れて、スペインにやってくる。世界の中に自分の場所を見つけるために生まれ変わりたいと感じていた。トランスセクシュアルの若い外国人女性が生きていくのは簡単ではない。
歴史小説。ローマ帝国の最も偉大な軍人、エデタニア出身のマルクス・コルネリウス・ニグリヌス・クリアティウス・マテルヌスは、皇帝の座を巡るもうひとりの候補者トラヤヌスの野望にとっての脅威とみなされ、ダムナティオ・メモリアエ(記憶の破壊)を受ける。ニグリヌスは、最高の勲章を授与された将軍で、当時最も輝かしい軍歴を持ち、執政官となり、ローマ帝国の属州アクィタニア、モエシア、シリアの総督を務めるが、ローマ皇帝ネルウァは後継者としてトラヤヌスを選んだ。
人生を振り返る暴君、その権力を表した暗喩である本書には、フィクションと現実が混じり合う。主人公は世界でも稀な自分の個性をほめたたえ、協調性を欠き、エリート主義を貫く。臣下への共感の欠如、文化に対する蔑視、そして自分が宇宙の中心だとみなす思考で、完全な誇大妄想の持ち主となる。批判には耳を貸さず、対立する者皆に罰を与え、自分が憎しみの対象であると知ると、さらに誇大妄想が増幅する。しかし、予期せぬ結末が読者の認識を一変させる。どんな誇張もささいな逸話にすぎなくなるのだ。
パンダやシマウマは多様なこの世界に住むのが大好き。だって、違っていてもだいじょうぶだから! その謎を探ってみない? 児童の多様性を養うためのお話。
動物に隠されている数字を探しだすゲーム絵本。1と一緒に馬に乗ったり、3と飛んだり、4と卵を産んだり。馬のブルーノと友達になって数字を探し、20まで数えられるようになろう!
彼女は、親友の一番下の妹。黄色が大好きで、思うままに星を線で結んで星座を描き、彼女独自の星空を創りあげていた。彼は、革ジャン姿の反抗的な少年で、彼の胸をかき乱すあれこれをボールペンで描いていた。ふたりは共に一時代を駆け抜け、思い出を作り、唇がほとんど触れそうなくらい近くにいることもあるほど、ずっとお互いをとても必要としていた。
クーデターの企てと、新共和制確立に向けて機運が高まり、アルフォンソ13世の王政が揺らいでいた不安定な激動の時代。ホアキン・コルドバは、友人マテオから至急の呼び出しを受ける。ホアキンをトレド特有の霧が迎え、その霧は古都の栄華を覆い隠すように刻々と広がっていく。ホアキンは、タホ川の河畔で起きる一連の嫌な出来事に少しずつ巻き込まれていく。両目をえぐり取られた何人もの売春婦の死体が連続して発見されるが、誰もそのことを気にしていないようだ。
本書は小説だが、ひとつの時代全体を忠実に描き出したものでもあり、残念ながら有名になった、警察によるドーピング摘発作戦「オペラシオン・プエルト」をはさんだ前後数年間に、スペインのプロ自転車競技で起きたことを鋭く描いている。光と影の時代:不動産バブルと公的助成金の急増で、数多くの新チーム結成が可能になったが、その浮かれ好景気は暗い一面も伴っていた。読者は若きルカス・カストロを通してその暗い側面を知ることになる。