本書は小説だが、ひとつの時代全体を忠実に描き出したものでもあり、残念ながら有名になった、警察によるドーピング摘発作戦「オペラシオン・プエルト」をはさんだ前後数年間に、スペインのプロ自転車競技で起きたことを鋭く描いている。光と影の時代:不動産バブルと公的助成金の急増で、数多くの新チーム結成が可能になったが、その浮かれ好景気は暗い一面も伴っていた。読者は若きルカス・カストロを通してその暗い側面を知ることになる。そして彼の自転車レース選手になりたいという夢を抱いていた子供時代から、自転車競技のエリートになるまでの歩みを追体験することになる。ひとつの世代の全自転車レース選手の、ジャーナリスティックな記録として読むことができる小説。本書はドーピングの世界を隠さず描いている。動機、誘因、実行、それら全てを、永遠に発展していくように思えたスペインという国とその経済を背景に描く。