パウラ・キニョネスは、スペイン内戦中の集団埋葬場所を探すためアサフラン村を訪れる。その不自由な片足を村に踏み入れるや否や、空が彼女の上に覆いかぶさって閉じ込められたような感覚に襲われる。まるで見えないゴムに体を引っ張られ、目的地であるベアト・ホテルから遠ざけられているような感じがしたのだ。そのホテルは「アスフロン」と読める看板の隣にあった。その夏、パウラは『Black, black, black(ブラック、ブラック、ブラック)』(著者が2014年に発表した小説)の主要登場人物のひとり、私立探偵サルコの義母ルスと手紙のやり取りをすることになる。ルスは美しい庭でのダビッド・ベアトとの恋愛を語る。また、密告者の存在についての怖れや、ホテル・ベアトに伝わる一族の伝説についても打ち明ける。一方で、ダビッドの母アナリアは、100歳の誕生日を迎えたばかりの優しい家長ヘスス・ベアトを愛情こめて介護し、ヘススが耳元でささやくメッセージに耳を傾ける。そして大勢の飢えた幽霊のような迷子たちと死んだ女たちの話に。