日本市場向けに専門家が選んだスペインの新刊書籍をお届けします。
今回は以下の専門家の方々に選んでいただきました。それぞれのお名前をクリックすると書籍紹介ビデオをご覧いただけます。:
野谷文昭(選考委員長:東京大学名誉教授・名古屋外国語大学名誉教授)(以下あいうえお順/敬称略) 越前敏弥 (文芸翻訳者)/榎本麻衣子(フォルトゥーナ、代表取締役社長)/廣瀬覚 (水声社、編集者)/山口侑紀 (花伝社、編集者)
各書籍のレポートを担当したのは以下の方々です(あいうえお順/敬称略、最終選考で選ばれなかった書籍のレポート作成者も含みます)
井原美穂/上野貴彦/宇野和美/國貞雅俊/笠原未来歩/佐藤晶子/嶋田真美/白川貴子/轟 志津香/長神末央子/中山 映/平野麻紗/宮崎真紀/村岡直子/村田名津子/矢野真弓/横田佐知子/吉田 恵
ふたりの出会いは公園だった。もう直ぐ14才になる少⼥カシとかなり年上の男性エル・ビエホ。この偶然の出会いはその後何度も繰り返されることになる。彼⼥は学校の強制から逃げているうえに周りの⼈々と交流できずにいる。⿃を眺めることやニーナ・シモンの歌を聴くことが好きな彼は仕事がなく、複雑な過去を引きずっている。世間からはじき出され傷ついたふたりは、不適切で世間からは認められない、疑わしい関係を築いていく。⼈々の推測が真実かどうかは別として、無理解や拒絶反応を引き起こす関係だ。
ボルヘスの蔵書を収めた図書館は彼の名前を冠した財団内にあり、その書籍のほとんどが哲学や宗教といったテーマを扱ったものだ。それらを著した⼈々を通じて、この天才の⼈⽣哲学のカギとなるものが見える。それはすなわち、幸福だ。『アレフ』の作者は、我々に素晴らしい図書館を残した。本書ではそのうちの数冊しか⾒られないが、その幸福のカギを発⾒することはできるだろう。彼が読んだ哲学者や神秘論者の本のいくつかが、彼の作品に決定的な影響を与え、そしてその作品が我々によりよく生きる道を教えてくれるのだ。
アデライダ・ファルコンはシングルマザーに育てられた。そのため家族と呼べるものは後にも先にも⺟と⾃分が築いていた関係しかないと固く思っていたが、その世界も⺟の死によってなくなった。貧しく失望した彼⼥が喪に服して暮らしている街では⾷料が⼿に⼊らず、わずかに⼊⼿できた⾷料も市⺠同士で強奪。強権的な政府は略奪し、誘拐し、殺⼈を犯していた。その全てがアデライダが閉じこもろうと決めた世界、すなわち⺟と暮らしていた家と外界との間で起きていた。抗議と政治的抑圧が続く⽇々。
4つの⼤陸(ロス・カメロスからリフ地⽅の⼭、コロラドのキャニオンからパキスタンの街かど、パリのスラム街からロンドンの⾦融街シティ、そしてジュネーブからフィンランドのアーネコスキーを通ってシャモニーまで)をまたにかけ、「正常」という基準によって屈服させられていない様々な⼈間が住む世界を巡って書かれた本書。刺激、グロテスクな状況、極東のエキゾチックな歴史、そしてまた、⾯⽩い戦いを超えたものを私たちに⾒せてくれる。
若い共和党員の医師ギリェルモ・ガルシアは、フランコ勝利後も親友からもらった偽の⾝分のおかげでマドリードに住み続けている。外交官だった親友は1937年にガルシアに命を助けられた後亡命したが、危険な秘密の任務を帯びて1946年に帰国する。その任務とは第三帝国、即ちナチスが犯罪者を隠匿するために作った地下組織に潜⼊すること。マドリードでその組織を率いていたのはクララ・ストーファーだった。