日本市場向けに専門家が選んだスペインの新刊書籍をお届けします。今回は以下の専門家の方々に選んでいただきました(あいうえお順/敬称略)
金関ふき子(編集者) / 兼森理恵(丸善・丸の内本店)/ 豊崎由美(ライター、書評家) / 野谷文昭(東京大学名誉教授・スペイン語文学者) / マヌエル・アスアヘ=アラモ(イングリッシュエージェンシージャパン)
各書籍のレポートを担当したのは以下の方々です(あいうえお順/敬称略)。青砥直子 / 井原美穂 / 宇野和美 / 潤田順一 / 小原京子 / 柏倉恵 / 金子奈美 / 嶋田真美 / 高際裕哉 / 高部良 / 棚瀬あずさ / 長神未央子 / 宮崎真紀 / モンセ・マリ / 安田晶 / 矢野真弓 / 横田佐知子 / ルベン・バレナ・クレスポ
グロリアとマルセルは、それぞれの家族の過去を辿りながら、リオフリオにたどり着く。過去スペイン内戦の騒乱に巻き込まれた、山あいの小さな村だ。リチャードはジャーナリストで、スイスの高級リゾート地ロカルノで開催される経済サミットに関するニュースを取材中だが、60年代にまさに同じ場所で結ばれた別の情事そっくりの官能的な体験をする。その過去の情事こそグロリアとマルセルを苦しめている問題の元凶だった。
ララは学校で「ビチョ・ラロ(変な子)」というあだ名をつけられている。仲間外れにされている理由はまず、彼女は文学にしか興味がないみたいだし、友だち付き合いがうまくないからだ。ララは2年前にパリに引っ越した。その環境の変化はひとつのチャンスだと思ったがそうじゃなかった。やりきれなくて、学校をさぼりパリの街をぶらぶら散歩している途中で、不思議な本屋、ブランシャール書店を見つける。その本屋の看板は1冊の開いた本で「エクス・リブリス」と言う文字とクエスチョンマークがふたつ書かれている。
家から逃げてきたひとりの子供が、隠れ家の奥に潜んでいる。彼を探す男たちの叫び声が聞こえる。男たちが通り過ぎてしまうと、彼の前には干からびた大地が果てしなく広がっている。逃げてきた場所に戻りたくなければ、そこを超えて行くしかない。ある夜、ひとりのヤギ飼いと出会い、その時から、ふたりにとって全てが一変してしまう。Intemperie(悪天候)は、干ばつにみまわれ暴力に支配される国を通り抜けて逃げる、ひとりの少年の逃避行を語る。閉ざされた世界、名前もなく日付もない。
魔女のマルハはやっかいな問題を起こしてばかり。一番最近のは、ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家。別の場所への移動願いを出したけれど、お話をめちゃくちゃにしてしまったのをえらい魔女のマンドーナが知ったらどうなるか……。本書は9歳以上まで読者対象を広げている、大ヒットシリーズEl Baúl de los Monstruos(怪物たちのトランク)の1冊。イラストがたっぷり入ったオールカラーの絵本で、型やぶりの魔女が子どもたちを笑わせてくれる。
没後3世紀半にして初めて、ベラスケスが「語る」。ガリシア出身の歴史家で、美術史学博士のフランシスコ・シングールは、セビーリャ生まれの偉大な画家ベラスケスの伝記を再構築するという難題に挑戦した。このディエゴ・ベラスケスの回想録は、正確な出典をもとに、控えめでありながらかつ真実を明かす語り口で書かれ、ベラスケス絵画の手がかりと、彼の思考の内奥を読者に伝え、17世紀スペインを忠実に描写した作品でもある。「内気で、プライバシーを大切にした画家の分析・伝記。