住所不定のある男との友情は、真面目なある学生をどんな怪しげな情動にかりたてるのか? 息子の文学的資質に無関心な、ごく平凡な両親のもとで育った青年は、出所が怪しい金を使いちらす男によって、危険で不道徳な未知の世界へと導かれる。本の中でしか知らなかった領域に入りたくてたまらない、危険を求める青年と、アウトサイダーのような人生を送って得体のしれない男との間には、曖昧な親愛の情や、利用したり惹かれたりという絆が創られていき、ふたりはある冒険を共有することとなる。
ダミアンは失業して以来混乱している。ある日骨董市でちょっとした盗みを働き、たんすに隠れるが、彼が入ったままたんすは売られてしまう。ルシアとフェデという夫婦の部屋に運ばれたたんすの中で、ダミアンは家具の一部であるかのようにそこに居着く。ありえない設定を、いかにももっともらしくラストまでもっていく巧みさが、小説に格別の緊張感を与える。ダミアンは、隠れ場所からルシア夫婦を観察するうちに、ルシアの心や恐れや夢に寄り添うようになる。
強力なハリケーンで、マイナウニの街は壊滅状態に陥った。ストリートで暮らす幼なじみの3人の少年、サン、イボ、タジルは、災害後に打ち捨てられた家々に盗みに入ろうと決める。リーダーのサンは成功まちがいなしだと言い、従順なタジルは賛成した。だがイボは、もっと別の生き方があるんじゃないかと考え始め、アダミアとの出会いが、根なし草の生活を変えるターニングポイントとなった……。暴力が支配する阻害と絶望のなかで育まれる友情と愛の物語。