住所不定のある男との友情は、真面目なある学生をどんな怪しげな情動にかりたてるのか? 息子の文学的資質に無関心な、ごく平凡な両親のもとで育った青年は、出所が怪しい金を使いちらす男によって、危険で不道徳な未知の世界へと導かれる。本の中でしか知らなかった領域に入りたくてたまらない、危険を求める青年と、アウトサイダーのような人生を送って得体のしれない男との間には、曖昧な親愛の情や、利用したり惹かれたりという絆が創られていき、ふたりはある冒険を共有することとなる。「両親が悪しき反復と呼んだであろうことが青年を成長させる。世間からはとんでもない教育とみなされたとしても、ただ結果で判断しうるのだった」。