「あなたの耳に入っているかどうかわからないけど、ロベルトが亡くなったの」。こんなふうに始まる、かつての同級生ロシオのメッセージを読んだとき、エレナはドキッとした。文学の教師に恋をしたと気づいたあの日と同じように。今は彼の死、そして思い出と対峙しなければならない。エレナは死がどんなものか知っている(両親は、それぞれ全く異なる状況で亡くなった)が、ロベルトの死はすべての亡者を揺さぶる。エレナは毀誉褒貶相半ばするグルメ評論家だが、今は途方に暮れている。
小さな村の暮らしは、奇妙なイグルーの出現で混乱し、様々な疑問がわき起こる。心の目で見ることを学ぶための物語。無関心に慣れてしまった世界で、連帯を呼びかける。連帯や相手への敬意など、大切な資質を賛美する。文章も絵も細部まで行き届いた本で、親が我が子と、人間として大切なものについて話し合うのに最適。読んで、意見を出し合うための本であり、幼い読者の知的好奇心をかきたてる。
ピラミッドは驚くべき建造物で、その起源は謎めいている。だがエジプトには他にも、知る人ぞ知るうっとりするような場所があるのだ。そのひとつがハワーラの迷宮。地中に埋もれた神秘的な構造物であり、そこには過去の大帝国にまつわる真実が隠されている。冒険好きのスペイン人考古学者ラウラ・ソウトと、その夫オマル・サリムは闇に沈んだその場所に隠された恐るべき秘密を発見しようとする。オマルはエジプト空軍に在籍していたヌビア人の元兵士であり、疲れ知らずの対テロ闘士だ。
この本は奥義を示すような大げさなものでも、複雑なマニュアルでもない。むしろその反対で、自分や他人の人生をよいものにする、シンプルで常にやさしい魔法を紹介している。遊びから始まり魅了され、目がくらむ、ひとりでも、また仲間たちとでも、読者は魔法の一番簡単で愉しく、身近な部分に入りこむことができ、これまで、そして今現在も魔法が本質的に重要な部分を占める様々な文化を発見することになる。
アウリアとスフォルツア王朝は自国の元老院内部で沸き起こる反逆を警戒している。帝王の命を狙う陰謀に加担する一族もあれば、変わらず忠実な一族もあり、混とんとした戦闘状態が引き起こされて、派閥同士の対立が勃発する。一方、帝王の安全保障を担当するノルミドン警備隊はどうやら消えゆく運命にあるようだ。3000年以上にわたって帝国を維持してきた王朝も、また。そこで血統を守ることが優先事項となった。それはノルミドンのファビオ・ベルトゥッチのみならず、歴戦の傭兵マキシモ・エレアサールにとっての大義である。
ビリア国は男性、ヒネイカ国は女性が中心で、両国は対照的だ。ビリア国では、ラバジェ兄弟は見た目には安泰な人生を送り、ネイス・シナグラは不穏な街で苦しい生活を送っている。アラベジャ・メディチは結婚もせずに何とか生きていこうとしている。ヒネイカ国では、サロイ・ブルゴアが養子になる準備をする一方、妹のイラティは前途有望な発明家になる…盲目のエイデル・アイセアはといえば、人々の目の見据える先に未来がないことを知っている。しかし、これらの登場人物には共通の特徴がある。
セラフィン王子はこれまで児童文学に登場してきたステレオタイプな性的役割を覆す存在だ。本書は、男女共学が進む現代において、性差別のない社会における忍耐、尊敬、自由、機会の平等の価値を説く。児童文学に出てくる従来の登場人物に対して読者が持っていた性別への先入観を打ち壊してくれるのだ。セラフィン王子はピンク色の部屋で寝起きし、真の愛を探し求め、結婚したいと願い、自分の運命はしきたりが決めるものだと思っている。
1923年、プリモ・デ・リベラ政権は29年開催のイベロアメリカ博覧会を訪れる観光客の目から都市周辺の貧困地帯を隠すことを決定する。教会もないその地域で貧困のうちに子どもを亡くす母親たちにとっての唯一の慰めは、亡骸の写真を思い出として残すこと。そんな場末の地区にできた安宿は、数年のうちに県で一番大きくて安い、悪臭の漂う売春宿になった。ふたりの偉大な女性ダビニアとチェの物語は、1882年、クリスティナ・サラサル=エスポシトが13歳を迎えたときに始まった。
女の子が読者の前でマジックを披露する。マジック自体に目新しさはない。誰だってマジシャンがシルクハットからウサギを取りだすのは見たことがあるだろう。が、ここに驚きがある。そのマジックをどうやったかの説明だ。それは私たちが慣れ切っている現実のルールを壊す。2017年グラン・カナリア島絵本文庫国際コンクールで特別賞を受賞。
書道家は、あの谷や森の向こうには別の谷や森があることに思いいたり、人々にまた別の人々の話を語ることを夢見ていた。そしてある日、書き物机の前に座る代わりに、わずかな荷物を包んで深い森の中へと入っていった。書道家の旅はこんなふうに始まり、人々は自分たち以外の世界に気づく。詩情あふれる絵本には、旅の経験だけでなく、冒険したい、新しいことを発見したいという強い思い、自分自身の変化、他人を受け入れたり、受け入れられたりする能力など、旅へと私たちを駆り立てる気持ちも描かれる。