マヌエル・アパリシオ=ビリャルバは1964年の8月の早朝、セビーリャで生まれた。病院経営の仕事に携わり、ビルヘン・デル・ロシオ大学病院の幹部として20年間勤めている。その革新的な性格と社会貢献への責任感で、モーリタニアへの健康分野の国際協力など、いくつものプロジェクトを率いてきた。小説第一作目となる本書も、その分野での経験を生かして紡がれたものだが、この分野の他の物語と一線をたがえるのは、本書の舞台が実に具体的なことだ。舞台となったセビーリャの地区ビリャラタスは、すでに記憶から消え去っているが、確かに存在していた。その名もなき通りに曾祖母世代の人たちは移住させられ、窓のない掘立小屋では祖母世代の人がトマトの空き缶でゼラニウムを育てていた。