ローマで惨憺たる一時期を過ごしたアレックス・ベルナルは明け方バルセロナ空港に到着し、手荷物受取所で自分のスーツケースが出てくるのを辛抱強く待つ。やっと自分の荷物が出て来たときには同じフライトの乗客はとっくに自分たちの鞄を手に姿を消していた。しかし、がらんとした巨大ターミナルのベルトの上を1個のスーツケースが回り続けていた。金に困っていたアレックスは出来心からそのスーツケースを持ち帰る。そして、思ってもみなかった恋愛と苦痛の物語の主役となる。
1980年サン・フアン祭の前夜。コスタ・ブラバにあるカラベラ町の住民たちは村の夏季映画館のオープニングに来るはずの伝説のエバ・ガードナーを待っている。だが、みなが女優を待つなか、風変わりなブライトマン家の末息子フストだけは違っていた。この魔法の夜に、彼は自分の願い事をする代わりに、自分の家族の運命を変えるため、できる限りのことをするつもりだった。本書は幸せ探しの物語だ。
「こういう言い方はすでに矛盾をはらんでいそうだが、僕は自分がいわゆる自主亡命者のように感じている。縁を切ることのできない唯一のもの、つまり自分自身と根底でつながりを断てないので、どこにも安らぎを見いだせない」。テネリフェに移住したあるペルー人が、スロットマシーン場での新しい仕事を始めたときから日記をつけ始める。日々は先の見通しがまったくないまま過ぎてゆき、彼の周りの登場人物たちもよく似た状況にいる。
『空っぽの地方』は、パキスタンの信心深い戦士のキャンプからCIAやFBIのセキュリティーゲートまで読者を運ぶ。ビン・ラディンやジョージ・ブッシュを含む歴史上の人物や悲劇の裏を知る公務員など多くの人物をちりばめて展開する、魅力に満ちた謎解きである。作者はハイジャックを企てるアルカイダのメンバーが悲劇的儀式に向けて出発するターミナルに読者を誘い、誘導ミサイルになった飛行機で旅をさせ、火災が起きたワールドトレードセンターが地上の地獄になった102分間を体験させる。
孤独は私たちの感情の内部へのデリケートな旅であり、願望や感謝や正義や夢が合わさった空想に満ちあふれた冒険である。ページをかけめぐる数名の登場人物たちが、みな読者の心に残る。感じのよい泥棒ブルノ・ラバスティデ、書籍の処方師、若き夢狩人、そしてははちみつ色の目をした若い日本人女性などが、毎日午後になるとヴェニスのアパートで運命に立ち向かっていく。
孤独は私たちの感情の内部へのデリケートな旅であり、願望や感謝や正義や夢が合わさった空想に満ちあふれた冒険である。ページをかけめぐる数名の登場人物たちが、みな読者の心に残る。感じのよい泥棒ブルノ・ラバスティデ、書籍の処方師、若き夢狩人、そしてははちみつ色の目をした若い日本人女性などが、毎日午後になるとヴェニスのアパートで運命に立ち向かっていく。
魅力的な文学教授ビクトル・べガは、作家ウゴ・メンドサの未亡人からの風変わりな依頼を引き受けることにする。ウゴ・メンドサが死んだことは厳格に証明されているのだが、彼女は、亡き夫がまだ生きていないかどうか、毎年12月3日に彼の新しい手稿を送ってくるのが誰なのかを調べて欲しいと頼んできた。ビクトルは謎の糾明に乗り出し、その結果、自分の生命を脅かされるようになるが、一方でその間現れた謎めいた美女にぞっこんになる。
プリミティボ・ダトロが作家マウロ・レデスマ=ペリスの筆耕者を募集の広告を見て応募したとき、自分が恐怖の迷路に入りこみつつあるとは思いもしなかった。作家の蛮行にあった後、プリミティボは他の被害者の証言を集めた証言集を作ることにする。こうして生まれたのが『下劣な人生』だ。その残忍な行為をなんとか逃れた者たちの話を通じて、レデスマ=ペリスの人生と人間性を浮き彫りにした本だ。エクトル・サンチェス=ミンギリャンは本作で、倒錯したナルシシストの人となりと、ねじれて混乱した誘惑のやり口を巧みに描きだす。
ビルヒニアは家族と一緒に田舎で、動物や草木に囲まれて暮らしている。雌犬のライカ、カエルのレネー、フェレットのウーゴ、鳥のグリップと暮らすのは、兄弟といるのと同じように極自然なことだ。彼女にとって動物は家族同然だ。しかしその夏、ビルヒニアはとても不思議な出来事に出会う。木の上に作られた小さな家に、どこからともなく次々と本が現れるのだ。誰が置いていくのだろう? それはなぜ?
日本の天皇は何としてでも、侍たちが祖先から奪い取った権力を取り戻そうと決心を固める。しかし蜂起を前に、北条家が都を攻撃する。都の外では天皇に忠実な地方の領主が京都の僧兵たちの砦に避難する。彼らの忠誠の誓いは包囲された人々の最後の希望であった。元寇の闘いが始まった。こうした出来事が聖なる島々を揺り動かす中、ひとりの田舎の少年がある禅僧に伴われて巡礼修行を始める。