孤独は私たちの感情の内部へのデリケートな旅であり、願望や感謝や正義や夢が合わさった空想に満ちあふれた冒険である。ページをかけめぐる数名の登場人物たちが、みな読者の心に残る。感じのよい泥棒ブルノ・ラバスティデ、書籍の処方師、若き夢狩人、そしてははちみつ色の目をした若い日本人女性などが、毎日午後になるとヴェニスのアパートで運命に立ち向かっていく。魔術か催眠術のように心とらえる感動的なこの小説は、読者をパリからブエノスアイレスへ、ヴェニスからインドシナ半島へと連れて行き、登場人物たちのたどるのっぴきならない旅程の共犯者に仕立て上げる。彼らは孤独な敗者であるように見えるが、自分でもそれと気づかぬうちに、人間が望みうる最も気高く美しいこと、つまり他人を幸せにすることをなしとげるのだ。