「こういう言い方はすでに矛盾をはらんでいそうだが、僕は自分がいわゆる自主亡命者のように感じている。縁を切ることのできない唯一のもの、つまり自分自身と根底でつながりを断てないので、どこにも安らぎを見いだせない」。テネリフェに移住したあるペルー人が、スロットマシーン場での新しい仕事を始めたときから日記をつけ始める。日々は先の見通しがまったくないまま過ぎてゆき、彼の周りの登場人物たちもよく似た状況にいる。生徒がいない高齢の教師、ギャンブル中毒の女、痛ましい過去に主人公を縛りつける旧友、横暴なボス、一作以外は鳴かず飛ばずの作家、奇妙な目的を持つ美少女、昔の恋の長く伸びた影……。「ホルヘ・エドゥアルド・べナビデスは素晴らしい作家だ」(作家フェルナンド・イワサキ)