日本市場向けに専門家が選んだスペインの新刊書籍をお届けします。今回は以下の専門家の方々に選んでいただきました(あいうえお順/敬称略)。
伊藤道一 (イタリア書房)/宇野和美(翻訳者)/奥山ケニー(日本ユニ・エージェンシー)/田中優子(河出書房新社)/野谷文昭(東京大学教授)/山本知子(リベル)
各書籍のレポートを担当したのは以下の方々です(あいうえお順/敬称略)。青砥直子/伊香祝子/井原美穂/宇野和美/エレナ・ガジェゴ/小原京子/柏倉恵/金関あさ/児玉さやか/佐藤まゆり/高部良/田中恵/長谷川晶子/浜田和範/星野由美/宮崎真紀/安田晶/矢野真弓/吉田恵/リベル/渡辺マキ
本書はサラマンカ大学という組織の初期の歩みを描いたものである。サラマンカ大学の創設は12世紀だが、カトリック女王イサベルが同大学をソルボンヌ大学スペイン版に育てようと決心して世界的に有名になった。本書は見事な散文によって、魅惑的で激しい世紀に我々をいざなう。人文主義がイタリアでおこり、ヨーロッパに広がった後スペインにも到来した時代である。イベリア半島では、すでに確立している宗教秩序を維持せんと人文主義に対抗し異端審問所が立ちはだかる。
書店にある他の本とは異なる、サグラダ・ファミリアについての書。人間としての、また芸術家としてのガウディの経験を語らせたら並ぶもののない証人である外尾悦郎との対話。日本人の彫刻家、外尾は30年以上前にバルセロナに来てサグラダ・ファミリアの石の鼓動に魅了された。作品への関わりはガウディへの、とりわけガウディが見ていたものへの、深く沈思したまなざしがあったからこそ。
マサトラン(メキシコ)の海辺。イサベルがハンモックで目をさますと、髪がくしゃくしゃの野生の少女が彼女を見つめている。イサベルの愛情と辛抱強い教育のおかげで、その少女カレン・ニエトは話すことや読み書きを覚え、大学では単位をだいぶ落としながらも動物学を専攻し、世界有数のマグロ漁の会社社長となる。が、相当の変わりものである。知的な面はかんばしくないが、そのほかでは天賦の才を発揮し、海洋生物の保護に乗りだす。海にあってはマグロと一緒に潜り、陸にあっては人々に笑いと戸惑いを振りまく。
周知のとおり、中世においてサンティアゴの道は様々な国から大勢の人々が途切れなく集まり、一大文化交流の場となった。この道を行きかったのは様々なものの見方、知識、歌、音楽、芸術様式、芸術作品、そして言い伝え。特に、当然のことながら、ヤコブの人生とその死、行った奇跡についての伝説である
アントニア26歳。もの皆変わっていく80年代マドリードで、4歳の男の子とふたりきりだった。若く未熟で子どもを抱えながら生きていた女性の、内面の軌跡の物語。大都会で、確としているよりも渾沌とした時代の中で、喪失と孤独を経験するにはあまりに早すぎた人間が、自分自身の場を確立しようとする。