日本市場向けに専門家が選んだスペインの新刊書籍をお届けします。今回は以下の専門家の方々に選んでいただきました(あいうえお順/敬称略)。太田昌国(現代企画室)/ カンタン・コリーヌ(フランス著作権事務所)/ 鴻巣友季子(英語圏文学翻訳家・文芸評論家)/ 多賀谷太郎(福音館書店)/ 野谷文昭(東京大学教授)
各書籍のレポートを担当したのは以下の方々です(あいうえお順/敬称略)。青砥直子 / 井原美穂 / 宇野和美 / 潤田順一 / 小原京子 / 金関あさ / 佐藤まゆり / 嶋田真美 / 高際裕哉 / 灘辺佳代子 / 長谷川晶子 / Javier Fernández Sánchez / 宮崎 真紀/ 村田名津子 / 安田晶 / 矢野真弓
はるか昔から、魔女オマールの一族は、血に飢えた魔女オディッシュの一族から隠れて暮らし、預言者によって選ばれし者の到来を待ち望んでいた。今、星はその時が近いことを告げている。14年間ピレネーの山奥の村で、一族の女性たちにまつわる秘密を知らないで育ってきたアナイードは、母親である赤毛のセレーネが姿を消したとき、身も凍る信じがたい真実とむきあい、危険と発見に満ちた道を歩みだす。
14歳の少年ニコは、ある朝いつもと違う道を通って学校へ向かったところ、途中で見たことのない家を見つける。不思議に思って中に入ると、奇妙な宇宙にはいりこんでしまう。
バルセロナの最も特徴的なモニュメント「サグラダ・ファミリア」を理解することは容易ではない。しかし、当のガウディは、解決できない謎としてではなく、誰にでも開かれた本のようにそれを設計した。ガウディは「彼の」作品がどこからでも見えるよう望み、それを成し遂げた。またサグラダ・ファミリアを作る全ての石、ひとつひとつの石が語りかけて欲しいと望んだ。ガウディはその建築に着手したばかりのときにこの世を去った。
レオノーラ・キャリントンは、繊維業界大物の相続人として、裕福で何不自由なく育つ運命の星のもとに生まれた。しかし、小さい頃から自分は他の子とは違うと彼女にはわかっていた。他人には見えないものが見える能力が、彼女を特別な存在にした。個人的にも芸術的にも自由な女性でいる権利を勝ちとるために、社会のしきたりや両親や教師に立ち向かい、宗教や思想のくびきを断ち切っていく。今日では伝説となった、シュールレアリズムの大女流画家レオノーラ・キャリントンの魅力あふれる人生が、私たちの夢を膨らませる。
事故にあった瀕死の一頭の馬。愛し合う勇気を持てないカップル。ひとりの若者。『ある馬の死』の中では、こういった単純なモチーフが組み合わさって愛と死に関する物語を構築する。愛することへの恐れ、死と事故の体験、他者の内面と、他者と対峙する自分自身の内面の遅々とした発見。実際には、舞台は一枚の写真のように動かない。主人公たちの心の内面と意志は、瀕死の一頭の馬のまわりをぐるぐるとめぐりながら、何が起きたのか、自分たちは本当は何を望んでいるのかを理解しようとする。