ダニ・サンタナについて、何か知っているだろうか? 彼は日刊紙「クロニカ」の元部長で、現在テレビの調査インタビュー番組を作っている。一連の問題からようやくのがれたと思うと、また新たな問題がもちあがる。気性のはげしいシシリア女性、トゥッザ・テレーザが、彼の番組に登場しマフィアの秘密をあばいたことから、彼の人生は変わる。バルセロナのリセウ劇場の火災の、とある目撃者が、公式発表されているバージョンとはまったく異なる、ひどく気がかりな告白をする。
ニコラウ・コマグラン・セルクは詩人ニック・セルクとして名を馳せている若者。文学の道を志すが挫折し、マジョルカに戻り、叔父を手伝ってインディラ・ホテルで働き始める。祖父の時代から一族が所有する少々さびれたホテルである。こうして一転、踏み込んだ新たな世界にあったのは、昔の亡霊たちと、恋と成功のライバルになる人物の家族の幻惑だった。本書はニックとナタリアの狂わんばかりの恋と発見の物語だ。2人の関係は、過去や秘密や不満、運命や嘘に彩られている。
『沈黙のホテル』というこの暗示的なタイトルから、ハビエル・バスコネスは私たちを戦慄の極みに連れていく。真夜中にホテルの闇を切りさく子どもの泣き声よりも身に毛のよだつものがあるだろうか? しかし、この小説の一番の読みどころは、絶望する複数の人々の物語が織りこまれていることだろう。舞台は、子どもという最も弱く無防備な存在を被害者とする連続誘拐と殺人に震撼する都市。この街で登場人物たちは愛と自分自身を探し求める。
2011年第13回デスニベル文学賞受賞作。ジョンはバスク人の料理人で短気な登山家でもある。家族に大問題が生じたあと逃げ出してチベットに行く。古地図好きなチベットの僧ドルジェは1717年にフランスのイエズス会士が作成した、奇妙な注釈つきの地図を見つける。カルロタはずっと人生から逃げてきた、キューバ生まれのはちゃめちゃな地図作成者。サムはいつもギリギリのところで生きようとする米国生まれの登山家でガイド。本書はこうした人々の物語である。
2015年が始まった。バレンシア政界がここ数十年経験したことのない大きな変化を遂げるまであと少しに迫っていた。しかし、流れに逆らって生きる人たちは依然としてその姿勢を保っていた。変えたくもなかったし、変えられなかったのだ。勤めていた新聞社を辞めてフリーのジャーナリストになったマルク・センドラは町の中心地で起きた歴史的な強奪事件に関する小説執筆の準備をしていた。
エンマ・クルスは弁護士で、刑法の教授。大学で講義をするために、ガリシアの小さな町メルロに引っ越す。そこに不幸な過去があったことなどまるで知らずに。彼女が村に着いた日は、ちょうどジロー姉妹が大地に飲み込まれたように忽然と失踪してから25年目の日だった。そうして、エンマは、メルロの住民が秘密を抱え、口を固く閉ざしていることがあることを知る。
魅力的で成功したジャーナリストだが、自分の環境になじめないでいるアンヘラ、 両親をひどく怒らせている反抗的なティーンエイジャー、エバ、 待ち望んだ娘が生まれた後、幸せな結婚生活がぎくしゃくしてしまった若い夫婦。これらの登場人物の人生が、同じ不幸な運命の下で絡み合う。 彼らの人生の隠された面に想像をはるかに超えた共通点があるのだが、その隠しているものとは何だ?
家から逃げてきたひとりの子供が、隠れ家の奥に潜んでいる。彼を探す男たちの叫び声が聞こえる。男たちが通り過ぎてしまうと、彼の前には干からびた大地が果てしなく広がっている。逃げてきた場所に戻りたくなければ、そこを超えて行くしかない。ある夜、ひとりのヤギ飼いと出会い、その時から、ふたりにとって全てが一変してしまう。Intemperie(悪天候)は、干ばつにみまわれ暴力に支配される国を通り抜けて逃げる、ひとりの少年の逃避行を語る。閉ざされた世界、名前もなく日付もない。
1809年冬の初め、ナポレオン軍の脱走兵でひどく負傷した男が山の中のとある小さな村にたどり着く。その村がこの小説の中心舞台となり、村の通りや草原で、命と秘密、情熱と希望が150年以上に渡って絡み合う。家、広場、森、空、洞窟……、生きていくという魔法以外何の変哲もない村、冬があまりに長く、空気は雪と霜の匂いがする。夢見る子どもたち、忘却を拒む老人たち、冬そのもののような日々を耐える男女たち。しかし、全てが見かけ通りではない。
若きエイレーネーは、アテネからコンスタンティノープルにやってきたとき、未来に何が待ち受けているかわからなかったが、やがて道は思わぬ方向に向かう。皇帝の妻であり母だった彼女は、衰退しながらもいまだ過去の栄光をとどめる東ローマ帝国の、紛れもない唯一の女帝となる。女性でありながら、少数の忠実な家臣とともにひとり厳格に、コンスタンティノープルから民と土地の運命を統べていく。