全てを飲み込んでしまうアウシュビッツの黒いぬかるみの上に、フレディ・ヒルシュは密かに学校を建てた。本が禁止されている場所で、若い娘ディタは服の下に、史上最も小さく、人目につかない、秘密の公共図書館のもろい本を何冊か隠している。恐怖の真っただ中にあって、ディタは私たちに勇気についての素晴らしい教訓を与えてくれる。恐ろしいナチスの絶滅収容所の中でさえ、彼女は屈しないし、生きる意欲、読書の意欲を決して失わない。なぜなら「本を開けることは汽車に乗ってバケーションに出かけるようなもの」だから。
魔女のマルハはやっかいな問題を起こしてばかり。一番最近のは、ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家。別の場所への移動願いを出したけれど、お話をめちゃくちゃにしてしまったのをえらい魔女のマンドーナが知ったらどうなるか……。本書は9歳以上まで読者対象を広げている、大ヒットシリーズEl Baúl de los Monstruos(怪物たちのトランク)の1冊。イラストがたっぷり入ったオールカラーの絵本で、型やぶりの魔女が子どもたちを笑わせてくれる。
ノラは24歳をほんの少しすぎたところ。とても勇敢で、ユーモアのセンスが抜群で、なにより人生を思い切り謳歌したいという果てしない欲求を持った女性。モダンな街バルセロナで映画を学ぶ学生のノラは、全く違ったタイプのふたりの男性にアタックされることになる。育ちがよく将来有望なシャビエルと、謎めいたセクシーなマティアス。
La casa del silenci(沈黙の家)は女性、クラシック音楽、バイオリンをめぐる小説。ベルリンでのあるコンサート中に物語は展開する。コンサートが今しも始まろうとしている。はりつめた空気。観客の中にいる老女の存在にオーケストラのメンバー何人かが落ち着かなくなる。彼女は何者か? 彼女との関係は何か? たくさんの物語がひとつになった小説。持ち主の手を離れ人手に渡った1台のバイオリン。亡命生活を余儀なくされたオーケストラ指揮者。家族を引き裂いた戦争。
電車の運転士が、4人の人物の死について許しを乞う手紙を残して自殺する。手紙の中で、犠牲者の中のひとりの子供について漠然と触れられている点が、「ヌエストロ・ティエンポ誌」の編集者ベロニカ・ローゼンタールの注意を引く。ベロニカは妥協を許さない生粋のジャーナリスト。真実と正義を追求することに情熱を燃やし、ヘビースモーカーで、酒に目が無く、妻帯者に弱い。ベロニカの調査を阻むことができるものは何もない。
没後3世紀半にして初めて、ベラスケスが「語る」。ガリシア出身の歴史家で、美術史学博士のフランシスコ・シングールは、セビーリャ生まれの偉大な画家ベラスケスの伝記を再構築するという難題に挑戦した。このディエゴ・ベラスケスの回想録は、正確な出典をもとに、控えめでありながらかつ真実を明かす語り口で書かれ、ベラスケス絵画の手がかりと、彼の思考の内奥を読者に伝え、17世紀スペインを忠実に描写した作品でもある。「内気で、プライバシーを大切にした画家の分析・伝記。
1937年5月、ゲルニカの爆撃後、何千というバスク人の子どもたちが戦争の残虐さを逃れ、亡命地に向かってサントゥルセの港から出発した。その中のひとり、8歳の少女カルメンは、ベルギーに住む、ロルカの翻訳家でもある作家の家に身を寄せることになった。カルメンは祖国から引き離され、その作家の家族のもとで育つ。第二次世界大戦が終結した日、養父が亡くなり、フランコ体制下のスペインに戻ったカルメンは、生まれた家で新たな生活を始める。
深く魅力的な文体で、恋をした状態について考察する小説。ほぼだれもが恋愛を有益なもの、ときには救済とさえ考えるがゆえに、恋愛においては、高貴で無欲な振る舞いから、大いなる横暴や下劣さまで、ほとんどすべてのふるまいが正当に思えるものだ。