本書は小説だが、ひとつの時代全体を忠実に描き出したものでもあり、残念ながら有名になった、警察によるドーピング摘発作戦「オペラシオン・プエルト」をはさんだ前後数年間に、スペインのプロ自転車競技で起きたことを鋭く描いている。光と影の時代:不動産バブルと公的助成金の急増で、数多くの新チーム結成が可能になったが、その浮かれ好景気は暗い一面も伴っていた。読者は若きルカス・カストロを通してその暗い側面を知ることになる。
ファンタジー映画『指輪物語』、最近公開された『ホビット』から『はてしない物語』『オズの魔法つかい』『ファンタジア』『マジック・ダンス』『コナン・ザ・グレート』などの名画へのオマージュとして生まれた新しい本。『映画本3D』シリーズの主人公は5人の子どもたちで、5人で力を合わせて謎や追跡や挑戦に立ち向かっていく。羽のあるサル、魔女、小人……。脚本家が戻ってきた! ファンタジー映画の世界で、どんな驚きがきみを待ち受けているのか? 3Dめがねをかけて、この新しい世界を体験しよう。
パウラ・キニョネスは、スペイン内戦中の集団埋葬場所を探すためアサフラン村を訪れる。その不自由な片足を村に踏み入れるや否や、空が彼女の上に覆いかぶさって閉じ込められたような感覚に襲われる。まるで見えないゴムに体を引っ張られ、目的地であるベアト・ホテルから遠ざけられているような感じがしたのだ。そのホテルは「アスフロン」と読める看板の隣にあった。
士官学校で恐ろしい事件が発生した。ある男が殺害され、遺体はばらばらにされて隠されたり下水溝に投げ込まれたりしたのだ。容疑者とされたのは学校長でキューバ戦争の英雄、ビセンテ・アグレロ大尉。大酒飲みで賭博好きなうえ喧嘩っ早く、長女のビルトゥーデスと近親相姦の関係にあった。一方、殺害されたのは娘の恋人で、壮年の経営者だった。彼は娘やその弟らを父親の束縛から解放すると約束していた。新聞はこぞってこの事件を追いかけ、逮捕された父親と娘の仕業だと連日書き立てた。
本書の価値は目では見えないものの中にある。目で見ることのできない2つのもの、つまり人生に対する姿勢と、内面の美しさだ。本書の主要な目的は、読者の自尊心を強くすることだ。人から好かれ愛される子どもは幸福だ。だれもがみな鏡を見て、自分が内側に持っているものを発見できる。
ペルガミーノは、スラブの伝説的王国アンの図書館司書ミコーラの息子。消えた呪いの本、うぬぼれの強い巫女たち、よこしまな神託、昔の生き物や、夜の力のような古の力の物語。ある夜、ペルガミーノは父が吸血鬼に脅されている場面に居合わせる。父は吸血鬼のせいで、話す・読む・書くという大事な力を奪われてしまう。ペルガミーノは父を救おうと、家に住む悪魔と魔法をかけられたヒツジとともに危険な旅にのりだす。しかし道は罠に満ち、最後に恐ろしい吸血鬼と対決することになる。
マドリードの重要な病院の救急医であるサンティアゴは、新型コロナの第一波によるストレスに満ちた毎日の後、久しぶりにゆっくり休暇を楽しもうと、妻と息子とともにエストレマドゥーラの小さな町ブレダに旅行に出る。そこは20数年前、彼が医師として初めて仕事をした町だった。だが、数日後、彼は死体となって見つかり、残された妻は、その死の捜査をベテランの探偵クピドに頼む。最後に引き受けた事件(若い妊婦が死んだ交通事故)を解決できずスランプにあったクピドは、その捜査に深くのめりこんでいく。
少女マリアは両親とともにメノルカ島に着く。そこは、人が変化に順応しつつ、生涯暮らしていく多くの場所のひとつだ。新居は、灯台の見える家〈エル・カリプソ〉だった。マリアは、島のなかの、不思議な生活を送る人々が隠れている場所を探検しつつ、成長していく。みなの世話をやく尼僧、ふたりの恋人たち、小さなクラブのウェイターと知り合い、外国人旅行客にあふれ、豪華な食事やクルーズや事故があるホテルを探検する。本作は、半ば自立した幼少期へのオマージュである。
『シェアアパート(シェアハウス)』は、内側の小説。魔法と記憶と日常性が組み合わさった、風俗小説的中編。多くの思い出や経験を持つ5人の婦人の人生と、ひとりの若い娘の人生が交差する。主人公の娘は、婦人たちがシェアしているアパートになぜ、どのようにして自分が現れたのかわからない。
フェルナンド・ペレス・デル・カスティーリョは1898年の米西戦争で米軍に一杯食わせた英雄の玄孫。異国風の金髪、意固地なまでの小心さ、そして名高い俳優になるとの強い熱意を先祖から受け継いでいた。このような性質を持った本書「Plano Americano(アメリカ全図)」の主人公はマドリードでのブルジョア生活から抜け出し、刺激的な冒険の旅に出て地球の半分を周り、多くの人と出会って様々な状況を経験する。