うら若き娘ファニャと呪術医の祖母のシモネは浜辺で傷ついて意識を失ったシャルドゥクという名のヒューマノイドを見つける。シモネにはこのヒューマノイドが水の霊だとわかり、孫とふたりで命を助けるために尽力する。目を覚ましたシャルドゥクは自分が住むテルリアがどのような世界か、そして「交差地帯」という不思議な場所を通りぬけ、どのようにしてこの世界に辿り着いたかを話す。やがてファニャとシャルドゥクは恋に落ちるが、別れの日がやって来た。
若い共和党員の医師ギリェルモ・ガルシアは、フランコ勝利後も親友からもらった偽の⾝分のおかげでマドリードに住み続けている。外交官だった親友は1937年にガルシアに命を助けられた後亡命したが、危険な秘密の任務を帯びて1946年に帰国する。その任務とは第三帝国、即ちナチスが犯罪者を隠匿するために作った地下組織に潜⼊すること。マドリードでその組織を率いていたのはクララ・ストーファーだった。
内陸部のある村で最も裕福な一家には奥様、その夫、幼いふたりの子ども、奥様の母親と使用人のアマリアがいる。彼らが暮らす邸宅では一見すべてが完璧だが、中身もそうとは限らない。奥様の名はコンスエロ。非常に貧しい家庭に生まれた美貌の若い女性。娘と自分の将来を確かなものにしようとした母親が見つけてきた相手と結婚したものの、コンスエロは妻である自分の立場に不安と恐れで一杯になっている。スペイン各地のビーチの道徳性に関する会議に出席する夫が、コンスエロと子どもたちを地中海のある町に連れていく。
一見何の価値もなさそうな風変わりな絵画1点が瓦礫の中から偶然発見される。しかし実際はとてつもなく貴重な美術コレクションの一部だとわかる。それは独立戦争の真っ只中、テルエルのマエストラスゴの村、バルデロブレスの地下に掘られた入り組んだトンネルの片隅に、知識人たちによって隠されたコレクションだった。そのお宝を探し出そうと人々が殺到し、追跡と死の狂奔劇に巻きこまれていく。
「ピッシンボニ家の人々はだれにも好かれていなかった。丘の上の蔦の絡まる家に住んでいたが、他の家々からあまりに離れていたので、村の外に住んでいると思われるほどだった。兄弟が大勢いたが、家長のイグナシオと妻のマルティナがまだ生きているのか、だれも知らなかった。村で姿を見かけることもなかった。
ビセンテ・フリーマンは新入りだ。新しいところに来るのはこれが初めてではないので、それほど心配はしていない。しかし今回は違う。今回はバルバラがいる。「ガーディアン」のボスだ。あるいは、そう彼女は思っている。それに「アパッチ」もいる。この地区で恐れられているワルどもだ。皆がビセンテに何かを求めている。でも、何を求められているのか、彼自身はよくわからない。おまけに彼はくさくさしている。ビセンテ・フリーマンが本当は何者か、今こそ示す時だ。2016年バルコ・デ・バポール賞受賞作。
ソフィーは森のそばにある家に両親とおじいちゃんと一緒に暮らしている。おじいちゃんは時々姿をくらまし、それが数時間のときもあれば数日にわたることもある。そしてすっかり汚れて、でもすごくうれしそうに帰ってくる。おかしいのはそれだけじゃない、メガネがすごくおかしくて……。おじいちゃんは何を隠してる? 本当は何をしてるの? それがわかった時、ソフィーは次第に大きくなる危険の存在に気づく。夢をこわす者たちがいるのだ……。
かつて義理の兄妹だったルベンとアマリアは、巨大マンションのエントランスでばったり会い、ずっと前から自分たちが同じ建物に住んでいたこと、どちらも自分が人生の主役と感じたことがないことを発見する。自分が傷つき、人を傷つけるのをおそれて、どちらも人が願うままに生きてきた。拒絶されるのを絶えず恐れながら、家族の枠に自分を当てはめようとしてきたルベンと、子どものころから姉妹とはりあってきた、利己主義で嘘つきのアマリア。
元市長ローヘル・ロブスの息子で多種の薬物依存症であるジュニアは、過剰摂取で危うく死にかけたあと、故郷のシエルぺへ戻ることにした。そこで父親が末期がんを宣告されたと知る。偶然にもこのふたつの出来事が重なったこと、そして以前からジュニアが取りつかれている死に対する強迫観念も手伝って、破綻していた父との関係を修復しようとする。小説は病室でふたりが過ごす最後の日々を綴っている。
エジプト学者であるふたりのスペイン人が、エジプトの神官の墓の考古学的発掘の過程で奇妙な碑文を見つける。アトランティスの歴史を語るプラトンの『クリティアス(対話篇)』の断片だった。発見に驚いた彼らは見つけたものの由来と意義を調査し始めるが、すぐに彼らの歩みを導く不思議な人物の助けを得ることになる。大学の友人アルバロ・デ・アンドラデの助けを借りて彼らはブラジルの街マナウスに行き、そこで、引退した警察官と連絡を取る。