元市長ローヘル・ロブスの息子で多種の薬物依存症であるジュニアは、過剰摂取で危うく死にかけたあと、故郷のシエルぺへ戻ることにした。そこで父親が末期がんを宣告されたと知る。偶然にもこのふたつの出来事が重なったこと、そして以前からジュニアが取りつかれている死に対する強迫観念も手伝って、破綻していた父との関係を修復しようとする。小説は病室でふたりが過ごす最後の日々を綴っている。その中で、自分が抱える全ての問題をカート・コバーンのせいだとする武道かぶれの精神病質者や、障害者で香水メーカーの所有者であるギャングなど様々な人物たちが登場する。過去2作の著書でも舞台となった想像上の町シエルぺの世界が、この3作目で更に広がりを見せる。父親の死というテーマに鋭い洞察力で迫っているが、困ったことに面白い。