スペイン新刊書籍 〈2025〉

少女がひとり。火事で焼け落ちた空き家にある、鎖で閉ざされたクローゼットの中で、古ぼけたテディベアを抱きしめ体を丸めている。 少女の瞳も、顔を半分おおったぼさぼさの髪も真っ黒だ。のろのろと動き、ほとんど話しもしなければ反応もない。何があろうと無表情で、まるで別世界にいるようだ。 彼女はマラ。彼女に見つめられただけで人々は震えあがる。 あなたは彼女の物語を読む勇気があるか? フリークショー、サーカス、予言、魔術、ブードゥーが一体となって、物語はアメリカ西海岸のほぼ全域を巡り、ニューオーリンズへとたどり着く。時は1915年。リプリング兄弟のサーカスでは、何ひとつ、誰ひとり普通ではない。有名なブードゥーの女王マリー・ラヴォーの裏に隠された暗い秘密もまたしかりだ。

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Laura Falcó著『Anomalía』の表紙
文学

NEW

異常

Anomalía

ラウラ・ファルコ=ララ

Laura Falcó Lara
Agencia Literaria Albardonedo

本書は、バレンシアの小村落を通る州道500号線を舞台とした一連の物語で構成される。情熱と批判とユーモアと知性が交錯する独特の雰囲気のなか、灼熱の地中海の風景へ読者をぐいぐいと誘いこむ。

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Borja Navarro著『Arcén』の表紙
文学

NEW

路肩

Arcén

ボルハ・ナバロ

Borja Navarro
Editorial Dosmanos

潔癖症の若い女性ソルは、妊娠して以来、毎週火曜日、家事代行のために雇ったディアナとエミリーをやや羞恥心を覚えながら自宅に迎えている。現代的な思考の彼女は、家政婦を雇うことをよしとしない。ゆえに、もともとは助けとなるはずのことが、「人からどう見られるか」という絶え間ない不安の種となっている。二人の家政婦がどうしても必要なのに、彼女たちがいなくなってくれればと願わずにはいられない。 不快感が募り、銀行口座の残高が減り続けるにつれて、ある疑問が湧いてくる。彼女たちと自分とは、それほど隔たっているのだろうか? もし自分が掃除婦だったら、容赦ない自分の家族(別名「夢を食い荒らすシロアリ」)が、品位に欠けるとか才能の無駄遣いだと自分をなじるのは目に見えている。ソルの人生や人間関係、彼女が世界を見る目は、ありのままの自身の性向と、他者が期待する自分とのズレにより、日ごとに変わっていく。 『清潔な家』はただの小説ではなく、強迫観念そのものであり、私たちが目にしたくないものすべてに向けられた視線である。品位あるものと屈辱的なもの、「彼女たち」と「私たち」、見えるものと隠されたもの、という二つの世界の間に常にある分断についての物語である。 マリア・アグンデスは、辛辣でありつつユーモラスな声で読者を魅了する。

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María Agundez著『Casas limpias』の表紙
文学

NEW

清潔な家

Casas limpias

マリア・アグンデス

María Agúndez
Editorial Planeta, S.A.U.

『Ejercicios de inmovilidad(不動の練習)』の主人公の女性たちは、周囲の世界からの苦々しい疎外感を感じている。感情が麻痺するような無関心や、生気のなさのようなものに悩まされ、画廊主や作家、歌手、介護者である彼女たちは、不安な境界的空間に追いやられている。不条理文学の最良の伝統を受け継ぐソニア・エルナンデスの語りから溢れでる声は、言葉を手がかりに実感を伴った現実を作りあげ、不穏な幻想の迷路に読者を引きこみ、彼女が生来の語り手であることを証明している。

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Sònia Hernandez著『Ejercicios de inmovilidad』の表紙
文学

NEW

不動の練習

Ejercicios de inmovilidad

ソニア・エルナンデス

Sònia Hernandez
Acantilado (Quaderns Crema S.A)

中国の暦でいう豚年に生まれ、驚くべき絆で結ばれたエルビラ、アナ、ハシント、テロ、イバン、フランという登場人物を中心に繰り広げられる小説。読者をぐいぐいひきこむ。 働いていた工場の閉鎖によって彼らの人生がどうなっていくかを巡って物語は展開する。彼らの夢、秘密、そして内なる葛藤があらわになり、その行動が新たな結果を招いていく。 巧妙な文章が読者をとらえ、裏切りと同盟の世界へと誘いこむ。種子を蒔けば、すべてを収穫することができるのかを問いかける強烈な人間ドラマ。

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Eva Braojos著『El año del cerdo』の表紙
文学

NEW

豚の年

El año del cerdo

エバ・ブラオホス

Eva Braojos
Eirene Editorial

僕は10歳で、生まれてからずっとこの地下室で過ごしてきた。両親、祖母、姉、兄と一緒に暗闇の中で暮らしている。みんな火事で顔がひどく変形してしまっていて、姉さんは火傷を隠すために白い仮面をつけている。姉さんの顔を見たら僕が怖がるかもしれないとパパが言うからだ。僕はサボテンが好きだ。僕は昆虫の本を読むのが好きだ。天井の隙間から差し込む唯一の太陽の光を何時間も触っているのも好きだ。でも、姉さんが赤ちゃんを産んでから、みんなの様子がおかしくなる。誰がその子の父親なのか、夜中に待ち伏せているコオロギ男は誰か、僕が生まれる前に何が起こったのか、なぜ僕たちがここに閉じ込められているのかについて、みんなは僕に嘘をついていると思う。でも僕にはホタルがいる。数日前に地下室にやってきたホタルを僕は瓶に入れた。おばあちゃんが言うように、自ら光を作り出すことができる生き物ほど魅力的なものはない。その光は、外の世界を知りなさい、逃げ出して、何が起こったのかを発見しなさいと僕をそそのかす。けれども、あいにくここでは全てのドアが閉ざされていて、どこに出口があるのか分からない...

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Paul Pen著『El brillo de las luciérnagas』の表紙
文学

NEW

ホタルの輝き

El brillo de las luciérnagas

パウル・ペン

Paul Pen
Dos Passos Agencia Literaria

思春期を終えたばかりのメキシコ人青年が、幽霊のように捉えどころのない女性に魅了され、その女性によって若き日のあらゆる願望を打ち砕かれ支配される。いわゆるゴシックロマンの典型的なストーリーの舞台を、ベラ・ブラウンは魅惑的な鋭敏さで21世紀の郊外に移し、狂気の愛の苦悩に満ちた波乱というよりも、主人公の感情が悲痛にも崩壊していくさまを描く。 前作『Solo que Marla no volverá(ただマルラは戻らないだけ)』(ドラセナ、2022)と同様、ベラ・ブラウンはひとりの女性の追跡を描く。しかし、前作が純粋なノワール小説であったのに対し、本作は舞台を現代の現実的な場所に設定している点で、ファンタジーの驚くべき再解釈となっている。この矛盾した試みは見事に成功し、本作に優れた独自性を与えている。

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Béla Braun著『El cuerpo anterior』の表紙
文学

NEW

前の体

El cuerpo anterior

ベラ・ブラウン

Béla Braun
Drácena Ediciones

今日のスペイン出版界を代表する書き手であるペイローが、フリオ・イグレシアスの評伝で初めてポップカルチャーに迫る。病をかかえてのデビューからヨーロッパやアメリカでの成功、そして最後にはネット上でからかいのネタになるまでの彼の人生を、父親、妻たち、子どもたちとの関係にも焦点をあてて描く。とはいえ、フリオ・イグレシアスの人物形成を語ることで、本書はスペイン社会の50年の歴史となり、フランコ独裁末期から現代に至る社会の変化を象徴する物語となっている。プラ、モーロワ、チェスタートン、エミール・ルートヴィヒの人物評伝の系譜に連なる本書は、ジャーナリズム特有の緊迫感と、文学だけが与えうる喜びを併せ持つ一冊である。

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Ignacio Peyró著『El español que enamoró al mundo』の表紙
文学

NEW

世界を魅了したスペイン人

El español que enamoró al mundo

イグナシオ・ペイロー

Ignacio Peyró
Libros del Asteroide, SLU

「モルテロスは簡単に理由もなく洪水になった」本書は、この一文から始まる。アルゼンチンのモルテロスの村の現実と、少女ビドリアの魔法のような想像力という二つの世界にまたがる、催眠術のように読者をひきこむ物語だ。水に漂う棺桶、屍のようなミラノ風カツレツ、世の終わりを思わせる牛、突然変異の少女たち、ハーレー・ダビッドソンと名乗る男等々は、モルテロスの日常における間違いない主人公の一部である。そんな中で、ビドリアが成長し、生きることを学ぶさまが、シルバナ・ボクトの制御不能の創意と豊かな語り口を通して語られる。子どもたちが楽しい夢、こわい夢を見るように、ボクトはいともたやすく、ユーモアと驚きに満ちたさまざまな心温まる場面をあざやかに結びつけてみせる。

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Silvana Vogt著『El fino arte de crear monstruos』の表紙
文学

NEW

怪物を創る絶妙の技法

El fino arte de crear monstruos

シルバナ・ボクト

Silvana Vogt
H&O Editorial

街を離れ、姪のエステラと共にティエバナに引っ越すことを決めたとき、グラシアは新たな人生のステージの始まりに胸を躍らせていた。美しい手つかずの自然に囲まれたパソ・イナニスで、その家の家事をになうアンヘラとふたりの子どもと共同で生活し、寝たきりの老婦人ベラの世話をすることになっていた。 パソ・イナニスは小さな楽園であり、アンヘラは新しく来たグラシアとエステラを家族のように扱ってくれる。しかし、日が経つにつれ、その村の人びとには生と死が自然に流れていないことにふたりは気づき始める。ほどなくしてティエバナでの滞在は、超自然的な恐ろしい広がりをみせはじめる。パソ・イナニスはふたりにとって日増しに敵意を帯びた場所となり、ティエバナの村が大きな犠牲を要求するために彼女たちを呼び寄せたことを理解することになる。

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Lola Llatas著『El lugar invisible』の表紙
文学

NEW

見えない場所

El lugar invisible

ロラ・リャタス

Lola Llatas
Obscura Editorial S.L.

アントニオは、計り知れない野心を抱くガリシアの実業家である。これまで後を継ぐのを渋っていた、父親が設立した棺桶工場をついに引き継ぐと、経営方針を一変させる。トップ企業にのしあがろうと、高級部門に目を向ける。ヒューストンとメキシコシティに旅立ち、そこで常に心から欲してきた成功を手に入れる。しかし、成功に手が届いた途端、彼の夢は不可解な形で消え去ってしまう。スペインに戻ると、すべてが変わりはて、取り返しのつかなくなっているのを知り衝撃をうける。家族も、家も、友人も、仕事も、街も、世界も、そして彼自身でさえも、15日前に彼が旅に出たときと同じではなくなっている。何も意味をなさず、すべてが不可能に思える。一体何があったのか? いつ、どんなふうに現実は歪んでしまったのか? フアン・タリョンは、矛盾に満ち、容赦なく、暴力的だが時には優しくもある人物を通して、違和感の体験に切り込んでいく。道徳的限界をほとんど持たず、世界に馴染めない主人公は、誰もがみな時としてそうであるように、自分の周りで起こる多くのことを理解できていないが、困難を乗り越えるためにはそれに立ち向かわなければならない。波乱に満ちた過去を持ち、自分を嫌悪する父親と対立し、忌まわしい姓を背負うことになった主人公アントニオは、逆境に打ちのめされながらも耐え、必要なことを何でもする覚悟があるならば、人はあらゆる野心を満たしていくことができるという、生きた見本である。

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Juan Tallón著『El mejor del mundo』の表紙
文学

NEW

世界一

El mejor del mundo

フアン・タリョン

Juan Tallón
Dos Passos Agencia Literaria

1980年に実際に起きた事故に着想を得た作品。繊細かつ共感に満ちた筆致で描かれた悲劇であると同時に、愛と回復と克服の物語でもある。定年退職したニカシオは、毎週木曜日に故郷の墓地を訪れ、国中に衝撃を与えた爆発事故で犠牲となった多くの子供のひとりである孫の墓参りをしている。忘れがたい人物ニカシオと、何年もを経てからの子供の母親の証言を通して、悲劇がいかに彼らの人生を永遠に変え、知られざる側面を暴きだしたかが明らかになる。予期せぬ感情と、心理的・文学的探求、そして密度の濃い感情にあふれた物語が、登場人物たちの運命を理解させ、感動を呼ぶ。

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Fernando Aramburu著『El niño』の表紙
文学

NEW

子供

El niño

フェルナンド・アランブル

Fernando Aramburu
Tusquets Editores

少女がひとり。火事で焼け落ちた空き家にある、鎖で閉ざされたクローゼットの中で、古ぼけたテディベアを抱きしめ体を丸めている。 少女の瞳も、顔を半分おおったぼさぼさの髪も真っ黒だ。のろのろと動き、ほとんど話しもしなければ反応もない。何があろうと無表情で、まるで別世界にいるようだ。 彼女はマラ。彼女に見つめられただけで人々は震えあがる。 あなたは彼女の物語を読む勇気があるか? フリークショー、サーカス、予言、魔術、ブードゥーが一体となって、物語はアメリカ西海岸のほぼ全域を巡り、ニューオーリンズへとたどり着く。時は1915年。リプリング兄弟のサーカスでは、何ひとつ、誰ひとり普通ではない。有名なブードゥーの女王マリー・ラヴォーの裏に隠された暗い秘密もまたしかりだ。

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Laura Falcó著『Anomalía』の表紙
文学

NEW

異常

Anomalía

ラウラ・ファルコ=ララ

Laura Falcó Lara
Agencia Literaria Albardonedo

本書は、バレンシアの小村落を通る州道500号線を舞台とした一連の物語で構成される。情熱と批判とユーモアと知性が交錯する独特の雰囲気のなか、灼熱の地中海の風景へ読者をぐいぐいと誘いこむ。

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Borja Navarro著『Arcén』の表紙
文学

NEW

路肩

Arcén

ボルハ・ナバロ

Borja Navarro
Editorial Dosmanos

潔癖症の若い女性ソルは、妊娠して以来、毎週火曜日、家事代行のために雇ったディアナとエミリーをやや羞恥心を覚えながら自宅に迎えている。現代的な思考の彼女は、家政婦を雇うことをよしとしない。ゆえに、もともとは助けとなるはずのことが、「人からどう見られるか」という絶え間ない不安の種となっている。二人の家政婦がどうしても必要なのに、彼女たちがいなくなってくれればと願わずにはいられない。 不快感が募り、銀行口座の残高が減り続けるにつれて、ある疑問が湧いてくる。彼女たちと自分とは、それほど隔たっているのだろうか? もし自分が掃除婦だったら、容赦ない自分の家族(別名「夢を食い荒らすシロアリ」)が、品位に欠けるとか才能の無駄遣いだと自分をなじるのは目に見えている。ソルの人生や人間関係、彼女が世界を見る目は、ありのままの自身の性向と、他者が期待する自分とのズレにより、日ごとに変わっていく。 『清潔な家』はただの小説ではなく、強迫観念そのものであり、私たちが目にしたくないものすべてに向けられた視線である。品位あるものと屈辱的なもの、「彼女たち」と「私たち」、見えるものと隠されたもの、という二つの世界の間に常にある分断についての物語である。 マリア・アグンデスは、辛辣でありつつユーモラスな声で読者を魅了する。

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María Agundez著『Casas limpias』の表紙
文学

NEW

清潔な家

Casas limpias

マリア・アグンデス

María Agúndez
Editorial Planeta, S.A.U.

『Ejercicios de inmovilidad(不動の練習)』の主人公の女性たちは、周囲の世界からの苦々しい疎外感を感じている。感情が麻痺するような無関心や、生気のなさのようなものに悩まされ、画廊主や作家、歌手、介護者である彼女たちは、不安な境界的空間に追いやられている。不条理文学の最良の伝統を受け継ぐソニア・エルナンデスの語りから溢れでる声は、言葉を手がかりに実感を伴った現実を作りあげ、不穏な幻想の迷路に読者を引きこみ、彼女が生来の語り手であることを証明している。

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Sònia Hernandez著『Ejercicios de inmovilidad』の表紙
文学

NEW

不動の練習

Ejercicios de inmovilidad

ソニア・エルナンデス

Sònia Hernandez
Acantilado (Quaderns Crema S.A)

中国の暦でいう豚年に生まれ、驚くべき絆で結ばれたエルビラ、アナ、ハシント、テロ、イバン、フランという登場人物を中心に繰り広げられる小説。読者をぐいぐいひきこむ。 働いていた工場の閉鎖によって彼らの人生がどうなっていくかを巡って物語は展開する。彼らの夢、秘密、そして内なる葛藤があらわになり、その行動が新たな結果を招いていく。 巧妙な文章が読者をとらえ、裏切りと同盟の世界へと誘いこむ。種子を蒔けば、すべてを収穫することができるのかを問いかける強烈な人間ドラマ。

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Eva Braojos著『El año del cerdo』の表紙
文学

NEW

豚の年

El año del cerdo

エバ・ブラオホス

Eva Braojos
Eirene Editorial

僕は10歳で、生まれてからずっとこの地下室で過ごしてきた。両親、祖母、姉、兄と一緒に暗闇の中で暮らしている。みんな火事で顔がひどく変形してしまっていて、姉さんは火傷を隠すために白い仮面をつけている。姉さんの顔を見たら僕が怖がるかもしれないとパパが言うからだ。僕はサボテンが好きだ。僕は昆虫の本を読むのが好きだ。天井の隙間から差し込む唯一の太陽の光を何時間も触っているのも好きだ。でも、姉さんが赤ちゃんを産んでから、みんなの様子がおかしくなる。誰がその子の父親なのか、夜中に待ち伏せているコオロギ男は誰か、僕が生まれる前に何が起こったのか、なぜ僕たちがここに閉じ込められているのかについて、みんなは僕に嘘をついていると思う。でも僕にはホタルがいる。数日前に地下室にやってきたホタルを僕は瓶に入れた。おばあちゃんが言うように、自ら光を作り出すことができる生き物ほど魅力的なものはない。その光は、外の世界を知りなさい、逃げ出して、何が起こったのかを発見しなさいと僕をそそのかす。けれども、あいにくここでは全てのドアが閉ざされていて、どこに出口があるのか分からない...

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Paul Pen著『El brillo de las luciérnagas』の表紙
文学

NEW

ホタルの輝き

El brillo de las luciérnagas

パウル・ペン

Paul Pen
Dos Passos Agencia Literaria

思春期を終えたばかりのメキシコ人青年が、幽霊のように捉えどころのない女性に魅了され、その女性によって若き日のあらゆる願望を打ち砕かれ支配される。いわゆるゴシックロマンの典型的なストーリーの舞台を、ベラ・ブラウンは魅惑的な鋭敏さで21世紀の郊外に移し、狂気の愛の苦悩に満ちた波乱というよりも、主人公の感情が悲痛にも崩壊していくさまを描く。 前作『Solo que Marla no volverá(ただマルラは戻らないだけ)』(ドラセナ、2022)と同様、ベラ・ブラウンはひとりの女性の追跡を描く。しかし、前作が純粋なノワール小説であったのに対し、本作は舞台を現代の現実的な場所に設定している点で、ファンタジーの驚くべき再解釈となっている。この矛盾した試みは見事に成功し、本作に優れた独自性を与えている。

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Béla Braun著『El cuerpo anterior』の表紙
文学

NEW

前の体

El cuerpo anterior

ベラ・ブラウン

Béla Braun
Drácena Ediciones

今日のスペイン出版界を代表する書き手であるペイローが、フリオ・イグレシアスの評伝で初めてポップカルチャーに迫る。病をかかえてのデビューからヨーロッパやアメリカでの成功、そして最後にはネット上でからかいのネタになるまでの彼の人生を、父親、妻たち、子どもたちとの関係にも焦点をあてて描く。とはいえ、フリオ・イグレシアスの人物形成を語ることで、本書はスペイン社会の50年の歴史となり、フランコ独裁末期から現代に至る社会の変化を象徴する物語となっている。プラ、モーロワ、チェスタートン、エミール・ルートヴィヒの人物評伝の系譜に連なる本書は、ジャーナリズム特有の緊迫感と、文学だけが与えうる喜びを併せ持つ一冊である。

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Ignacio Peyró著『El español que enamoró al mundo』の表紙
文学

NEW

世界を魅了したスペイン人

El español que enamoró al mundo

イグナシオ・ペイロー

Ignacio Peyró
Libros del Asteroide, SLU

「モルテロスは簡単に理由もなく洪水になった」本書は、この一文から始まる。アルゼンチンのモルテロスの村の現実と、少女ビドリアの魔法のような想像力という二つの世界にまたがる、催眠術のように読者をひきこむ物語だ。水に漂う棺桶、屍のようなミラノ風カツレツ、世の終わりを思わせる牛、突然変異の少女たち、ハーレー・ダビッドソンと名乗る男等々は、モルテロスの日常における間違いない主人公の一部である。そんな中で、ビドリアが成長し、生きることを学ぶさまが、シルバナ・ボクトの制御不能の創意と豊かな語り口を通して語られる。子どもたちが楽しい夢、こわい夢を見るように、ボクトはいともたやすく、ユーモアと驚きに満ちたさまざまな心温まる場面をあざやかに結びつけてみせる。

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Silvana Vogt著『El fino arte de crear monstruos』の表紙
文学

NEW

怪物を創る絶妙の技法

El fino arte de crear monstruos

シルバナ・ボクト

Silvana Vogt
H&O Editorial

街を離れ、姪のエステラと共にティエバナに引っ越すことを決めたとき、グラシアは新たな人生のステージの始まりに胸を躍らせていた。美しい手つかずの自然に囲まれたパソ・イナニスで、その家の家事をになうアンヘラとふたりの子どもと共同で生活し、寝たきりの老婦人ベラの世話をすることになっていた。 パソ・イナニスは小さな楽園であり、アンヘラは新しく来たグラシアとエステラを家族のように扱ってくれる。しかし、日が経つにつれ、その村の人びとには生と死が自然に流れていないことにふたりは気づき始める。ほどなくしてティエバナでの滞在は、超自然的な恐ろしい広がりをみせはじめる。パソ・イナニスはふたりにとって日増しに敵意を帯びた場所となり、ティエバナの村が大きな犠牲を要求するために彼女たちを呼び寄せたことを理解することになる。

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Lola Llatas著『El lugar invisible』の表紙
文学

NEW

見えない場所

El lugar invisible

ロラ・リャタス

Lola Llatas
Obscura Editorial S.L.

アントニオは、計り知れない野心を抱くガリシアの実業家である。これまで後を継ぐのを渋っていた、父親が設立した棺桶工場をついに引き継ぐと、経営方針を一変させる。トップ企業にのしあがろうと、高級部門に目を向ける。ヒューストンとメキシコシティに旅立ち、そこで常に心から欲してきた成功を手に入れる。しかし、成功に手が届いた途端、彼の夢は不可解な形で消え去ってしまう。スペインに戻ると、すべてが変わりはて、取り返しのつかなくなっているのを知り衝撃をうける。家族も、家も、友人も、仕事も、街も、世界も、そして彼自身でさえも、15日前に彼が旅に出たときと同じではなくなっている。何も意味をなさず、すべてが不可能に思える。一体何があったのか? いつ、どんなふうに現実は歪んでしまったのか? フアン・タリョンは、矛盾に満ち、容赦なく、暴力的だが時には優しくもある人物を通して、違和感の体験に切り込んでいく。道徳的限界をほとんど持たず、世界に馴染めない主人公は、誰もがみな時としてそうであるように、自分の周りで起こる多くのことを理解できていないが、困難を乗り越えるためにはそれに立ち向かわなければならない。波乱に満ちた過去を持ち、自分を嫌悪する父親と対立し、忌まわしい姓を背負うことになった主人公アントニオは、逆境に打ちのめされながらも耐え、必要なことを何でもする覚悟があるならば、人はあらゆる野心を満たしていくことができるという、生きた見本である。

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Juan Tallón著『El mejor del mundo』の表紙
文学

NEW

世界一

El mejor del mundo

フアン・タリョン

Juan Tallón
Dos Passos Agencia Literaria

1980年に実際に起きた事故に着想を得た作品。繊細かつ共感に満ちた筆致で描かれた悲劇であると同時に、愛と回復と克服の物語でもある。定年退職したニカシオは、毎週木曜日に故郷の墓地を訪れ、国中に衝撃を与えた爆発事故で犠牲となった多くの子供のひとりである孫の墓参りをしている。忘れがたい人物ニカシオと、何年もを経てからの子供の母親の証言を通して、悲劇がいかに彼らの人生を永遠に変え、知られざる側面を暴きだしたかが明らかになる。予期せぬ感情と、心理的・文学的探求、そして密度の濃い感情にあふれた物語が、登場人物たちの運命を理解させ、感動を呼ぶ。

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Fernando Aramburu著『El niño』の表紙
文学

NEW

子供

El niño

フェルナンド・アランブル

Fernando Aramburu
Tusquets Editores