マルタは10年間ずっと隠してきた秘密をパートナーに打ち明けた。それは、勤めていた高齢者施設で知り合った老人、ダニエル・ファウラ・オイゴンの奇妙で心惹かれる人生の話だ。ダニエルが亡くなった時、マルタは彼の日記と手紙、そして謎の女性サヤに捧げたソナタの楽譜を見つけた。日記はダニエルが少年時代から晩年まで、自分の人生を綴ったものだった。
美しさと荒々しさが同居する地域で、豊かさと貧しさ、白人と黒人が、距離を置きながら共存する太平洋の小さな村。その村がダマリスの物語の舞台。ダマリスは、女ざかりの太平洋の黒人女。長年ロへリオと連れ添ってきた。ふたりの白けた関係は子供を求めてのむなしい努力に大いに関係がある。あらゆることを試すが、ダマリスは妊娠しない。すべての希望が絶たれたとき、ダマリスは1匹の雌犬を飼うことになり、新しい夢を見つける。この雌犬との新しく身近な関係が、ダマリスにとって本能と母性について考察させる経験になっていく。
舞台はラ・パルマ島(1850~1946年)。ビリャ・デ・マソの金貸し女ペトラと彼女を取り巻く人々の物語。キューバへの移民を余儀なくした飢饉、ラ・パルマの人々の黄金世紀の絶頂と貧窮、物資不足の疲弊した社会に勃発した左翼思想、共和制への期待、スペイン内戦の残酷さ、反乱軍と生き残りのための彼らの闘い…、それらの史実が、ペトラの物語の過去、現在、未来を取り巻く。一方、彼女は心の中に強い愛を秘めている、限りなく長きにわたって誰にも知られないままに。
ちょっとの間、ひとりで留守番しなくてはならなくなったギリェルモは、悪いことばかりを考えてしまう。危険の真っただ中にいるような気がして、心臓がバクバクし、わけがわからなくなって、しまいに気絶してしまう。気づくと、不思議な世界にいた。いろんな道があって、どの道に行くかをギリェルモが決めなくてはならない。それまでいつもだれかかわりに決めてもらっていたギリェルモは、おじけづいてしまう。その時、一輪のマーガレットと出会い、一緒に素晴らしい秘密を見つけると、すべてが変わっていく……。
先住民のとある集落。シェップがナイフで親指の先を切ってしまい仕事は中断する。その出来事が偶発的な事故であることを疑問視する者は誰もいない。男も女も自分の役割を甘受し、それに疑問を抱く者はいない。若者シェップも同じだ。誰も何も自らに問うことをしない。先住民居留地では暮らしが変わることなく続き、彼らがとらわれている空間では、偶然と運命の間、あきらめとより良い生活の可能性の間を時間が流れていく。そんなとき、最初の白人が現れる。
マネル・ロウレイロが届ける、謎と伝説に満ちたガリシアを舞台にしたミステリー小説。神秘的な奇岩ポルタレンの下で、昔の儀式に則った方法で殺された若い女性の死体が見つかり、捜査員たちを困惑させる。刑事のラケル・コリーナは、現代医学では治療できない病に侵された息子を助けたい一心でガリシアのこの辺鄙な地に来たばかりだ。選択の余地がないラケルは、疑いながらも息子の完治を約束した地元の民間療法士に頼る。その民間療法士が突然いなくなった。
14歳の少年ニコは、ある朝いつもと違う道を通って学校へ向かったところ、途中で見たことのない家を見つける。不思議に思って中に入ると、奇妙な宇宙にはいりこんでしまう。
80人のコロンビア人がパリの街角で出会い、いきなり熱をおびた会話が始まる。60年代の革命運動を背景に、特に、これまで文学では語られてこなかった、フロイドやサルトルやマルクス主義に傾倒するコロンビア人たちを通して、物事のはかなさ、死にあたって見える生の広がり、すぎゆく世代などが見えてくる。世界が、時とともに償いの場となるようすが描かれるが、そこでは、陽気な再会の場として地獄があるという約束だけが、唯一の出口となる。
繫栄を極めた、西洋のとある国際的都市で不思議な現象が起こる。初めは不愉快な偶然の出来事としか思われなかったが、間もなくそれが悪意のある脅威に変わり、市民の心の内にある確信が覆される。社会全体に影響が及ぶこの現象を皮切りに、著者は密告、恐怖、疑念、はたまた略奪や魔力、迷信などにより社会が腐敗していく過程を描きだす。混乱の中、神話的絵画をゆったりと修復するような時間の流れの中で、ひとつの愛が静かに生まれる。