個性の異なる3人の若者が登場するファンタジー。彼らは物語の中で、読者が自分を重ねやすそうな日常の状況(いじめ、恋愛、家族関係など)と向き合い、自分の感情と戦うことを覚えていく。彼らはふたつの世界の分岐点でトラブルに巻きこまれていくが、それはあらかじめ直面することが運命づけられていたことのようだった。読者対象は12歳以上。若者のうちのひとり、パブロの1人称の、その年頃の若者らしい語りは親近感があり、読者は主人公たちの願望、不安、惧れに共感し、たやすく感情移入していけるだろう。
エリサは15歳。自分の結婚式の朝、式で弾かなければならないヴァイオリンの一小節を練習しようと努力している。 でもふたつの悲しみが彼女の胸を苦しめる。結婚しなければならない相手は見ず知らずの男だということ、そして彼女に音楽を教えてくれた先生であり、たったひとりの同志だった祖母が亡くなったばかりだということ。 慰めを求めて、エリサは祖母の部屋に行く。そこには祖母の大きな肖像画がかかっている。 そこで一度も開く勇気がなかった宝石箱を見つける。
第二次世界大戦を実際に経験した100人の語りを通して、戦争の全体像をまとめた一冊。大衆には知られていない人がほとんどだが、証拠で裏付けられた、いずも実際の話を読むことで、読者は人類が起こしたこの大きな争いについて知り、理解することができるだろう。
ララはまだ15歳にもならないけど、なんでもわかっている。生と死の間で戦っているからだ。病気を発症し、集中治療室に入れられ、その夜が峠になるかもしれなかった。だが治療室には、はじめて見る女医のカルメンがいて、心躍る物語、命の物語を語りはじめた。本書は、生の概念を説明する、心を打つクロスオーバー小説。1990年代、わたしたちは『ソフィーの世界』で哲学を理解した。今、21世紀のただなか、3人の偉大な科学者の手ほどきで「我々は何者か」「ここで何をしているのか」を理解することになる。
この小説には読者を待ち受ける多くの驚きがあり、そこには著者イグナシオ・アバドによる金細工のように繊細な仕事や、少しずつ読者を巻き込んでいくプロット構築の正確さが隠されている。物語を組み立てる彼の能力と、主人公である名前のないジャーナリストのしっかりした人物造形に裏打ちされて、私たちの前に繰り広げられるのは、過去、現在、未来を行き来し、ついには一対の鏡のなかで、あるいは迷宮、交錯するストーリーの迷路のなかで枝分かれしていく裁断された物語だ。
物語はオルバの貯水池で死体が発見されるところから始まる。主人公エステバンは、経営する工務店をたたんで、従業員を路頭に迷わせることになる。病気で末期の父親の看病をしながら、エステバンは、破産の原因を探す。彼はその犠牲者であり首切りの執行人という2役を背負っている。そして私たちはその瓦礫の中に、ひとつの社会、ひとつの世界、ひとつの時代を支配して来た価値観を見つける。福祉とその裏側、強欲と全て瓦礫と化してしまった偽りのプロジェクトの数々。エステバンの人生が映る鏡、ある意味特徴のない男。
1971年初頭から現在までの、ふたりの若い女性の人生をたどる。ひとりはラモナ・マルケス。革命家に捨てられたとき、妊娠していた。もうひとりはミレイア・フェレル。トマス・フェレルという男の娘である。トマスは「記憶と自由協会」の設立者で、国外追放者の記憶を留めるために闘っている。ミレイアは潜入中の国家警察官マヌエルと結婚するが、性暴力を避けるため身を潜めなければならなくなる。
ナタリア・セレソの最初の短編集En las ciudades escondidas (ひなびた町で)に収められた物語を読んだ⼈の⼼には、奇妙なミニマリスト感覚が残る。孤独で難解な登場人物すべてに強く感じられる、秘められた私生活。⼝に出さないこと、失ったことの中に彼らの本当の姿はある。彼らはただ、⽣きている。著者が語るのはそれだ。
自分の人生を300語にまとめることが出来る者がいるだろうか? アンドレス・バルバのこの空想的な小説の主人公は科学者のマルコス。母親が亡くなった後、妻と、複雑な政治歴を持つ引退したコメディアンの義兄弟とが初めてクリスマスに集ったときも、彼はずっとこの不可能なことについて頭を悩ませ続けていた。いつもながら個々人の密やかな空間を描き出すことに長けた作者は、本書でアイデンティティー、家族、ユーモア、願望、他人を真に発見した驚きについて語る。
歴史上、多くの女性は確固たる願望を実現させるために、あるいは単に社会の中で居場所を見つけるために、男性の役割をしなければならなかった。何世紀にもわたる女性に対する差別や不寛容のせいで、女性に男性と同じ権利を認めようとしない、融通の利かない不条理で不公平な社会と戦うために、反骨精神の強い女性たちは男装するに至った。実在の人物の伝記を模した本書の主人公は医師で、ナポレオン戦争で兵士となり、ヨーロッパの戦場を駆け抜けた。