運よく海を渡れたとしても、海は後ろに過ぎ去り、前には多くの店や汚れ、単調さや悲しみが横たわる。日々が同じように過ぎていき……ある日、それが一変する。そのとき君は店や行列や柵のはるか向こうに目をやるだろう。山々に。未来に。それを探しに行きたければ、探す理由を見つければいいだけだ。
オオカミや熊、鳥、小鬼やヒキガエルを怖がらせる怪物、ましてや子どもたち、王女さま、お年寄り、犬や猫などは震えあがるような怪物が、機嫌の悪い男の子に部屋から追い出されるなんて想像できる? これはそんなお話。主人公の怪物がお腹をすかせ、靴もなく寒さに震えながら町をさまよう羽目になり、途方に暮れてつぶやく。「怪物が追い出されるなんて話、どこにある?」
わたしたちが無くしていったものすべてを見つけることができたら素晴らしいと思いませんか? 1995年に、ある少女は左手の手袋を無くしました。少女が手袋を捜していると、すべての紛失物が行きつく所、〈失われた博物館〉に出くわしました。博物館は何階もある建物で、すてきな部屋がたくさんあり、二度と見ることができないと思っていた物であふれています。さあ、中に入ってください。でも、迷子にならないでね!
人生の危機は、うまく導くことですばらしいものとない得る。現実の挫折に伴う精神的な苦痛や空虚さの下には、自らの内面を見つめ、内なる革命を実行する可能性が秘められているのだ。失われた何かが人間関係であれ、仕事であれ、物質的なものであれ、あるいは長いこと抱き続けた夢であれ、違いはない。われわれは、失うことは永遠の罰ではないとわかっているので、被害者意識、感情的依存、考えすぎといった状態から、信頼感、平穏、心の中の自由へと気持ちを移行させることが可能だ。
16歳の少年サムエルが主人公の探偵小説。サムエルは家族の事情で、探偵事務所を経営している叔父のフアン・ドミンゴのもとに一時的に身を寄せ、叔父の新しい事件に協力することになる。ふたりで一緒に捜査するうちに、ラ・マンチャのワイン醸造家が高価な宝石〈ポリュペモスの目〉を盗まれたことを発端とする、張り巡らされた陰謀に気付く。事件にかかわりがあると見られるのはダミアン・ロメロという行方不明者とその同僚たち、古美術商、宝石商、骨董品を集める女性とその甥。
猛吹雪の山の中でひとり迷子になった小さなアリはどうすればいい? 冬眠したシロクマが何度も目を覚ますのはなぜ? シロクマと出会って安らぎと温もりを見つけた小さなアリの美しい物語。けれども最悪の状況で見知らぬ場所にやって来たアリにとっては、寒さから逃れ、手厚いもてなしを受けるだけでは不十分で、連れ添い、認めてくれる存在が必要だった。
理論家というより、ルシオ・ウルトゥビアは、断然、行動する男。彼の人生は、戦いに次ぐ戦いだった。多くの人の考えに反し、それが彼の遺産であり、ルシオの宝だ。ナバラ出身のアナキスト、ルシオ・ウルトゥビアとの尽きることのない会話やインタビューに基づいて、作者のベラッツは、ルシオの人生に影響を与えた行動、場所、人物、出来事、雰囲気を鮮明かつ綿密に再現する。自身もナバラ州のパンプロナ出身のイラストレーター、ベラッツが、ルシオの公式伝記作家として、最も有名な出来事や、あまり知られていない冒険を語る。
サグラダ・ファミリア(聖家族)教会が崩壊し、教会と共に、エルダの中で何かが壊れる。エルダは辛い過去との折り合いをつけるために、神戸からバルセロナに戻るため飛行機に乗る。バルセロナの街角で、当時のルームメートだったジュレスやヒロシとともに過ごした90年代の生活を思い出す。果たして彼女の決断は正しかったのかとの疑問が、今になって彼女をさいなむ。その過去から30年以上逃げてきたが、彼女の青春の何かが残っているだろうか?
不動産会社で熱心に働く女性が空き家になっている物件の内覧準備をしていると、まばたきをしない7歳の少年と出会う。ガラス瓶の中の虫のように昔からこの場所に捕らわれている少年は、女性に何かを期待しているがそれを言葉にすることさえできず、ふたりの間に不気味で完全なる相互依存関係を作り上げてしまう。