昔々、あるところに凛々しい王子がいた……昔々、あるところにふたりの勇敢な王女がいた……昔々、あるところに謎めいた吟遊詩人がいた……昔々戦争があり、彼らの運命が出会った。ファエシアの地へようこそ。そこはおとぎ話が見かけ通りではなく、満月の後ろに秘密が隠れている土地だ。
パワフルで自信に満ちたビジネスマンのアンドレウ・プラット。金、権力、家族、子供…欲しいものは何でも手に入れてきた。そんな彼だが、40歳を過ぎた今、離婚を考えている。この男の魅力に抗える女性はほとんどいないが、ヌリアはその例外のひとりだ。彼女にとってカラ・モントゴは悲しみを癒すためにこれからもずっと訪れるであろう場所。未来を思い描くための静寂の隠れ家であり、過去と現在が絡み合って、ハバネラに歌われているような「ほんの小さな楽園」となるのだ。
40歳の誕生日を目前に控えたディナは、ある辛い病の早期であると診断され、ふたつの別れのショックを受け、思いがけない3つのプレゼントを貰った。そんな疑問だらけの状況に置かれたディナだったが、自分の中に沸き起こる怒りや迷い、喪の悲しみを払拭するために真実の究明に乗り出す。友情の真価や忘却に対する認容と言葉が持つ大きな力について書かれた生命力あふれる物語。病はもちろんのこと殺人事件、売春、女性の人身売買から似非宗教の闇組織の話も出てくる面白い小説。
新聞記者のマルタ・ビラスが、ビゴに港に浮かぶバイク乗りの死体を発見した時、殺人犯が被害者のポケットに忍ばせた小さな玩具が自分の人生を変えることになるとは夢にも思わなかった。閉鎖してしまった玩具メーカー、ファモビル社が製造初期に発売したシリーズの小さな人形が、この事件と対岸のカンガスで漁師によって引き上げられた警備員の殺害事件、そしてその後ガリシアの海岸のあちこちで次々と発見された死体とを結ぶ唯一の手掛かりとなる。
人の心を巧みに操る老人と、美しく先見の明のある女性アーティストのラブストーリー。分類不可能なバラード、時にノワールのパロディ、時に誰が語ったかだれにもわからない家族史でもある。私たちの生きるグローバルではっきりせず、悲劇的で浮かれた世界を、皮肉たっぷり痛烈に映し出す。この世界では、人間は思いもよらぬ時に現れる。お金の陰で、あるいは主人がおらずスペースもないような環境で。スペイン語ではあまり聞かない優しさとユーモアを介した、寄る辺ない身を訴える叫び。
フェミニスト的観点から固定観念を退ける作者たちは、「快楽、性行為、エロティシズムがどのように、そして誰のためにあるべきか」といった、ひとつの明白な答えを出すような言説を展開したりはしない。本書には、一般的には規格外かもしれないが、社会に存在する性とエロスの多様性に応えるエロティックストーリー集という点では実にノーマルな性愛文学が網羅されている。これら12の文芸作品のテーマは、性的同意、自慰、スワッピング、性別のあいまいさ、個人の自由、探求、アバンチュール、生涯のパートナーの再発見など。
ジャーナリスト、アナ・R・カニルは、ある恐ろしい歴史を長い間追ってきた。スペイン内戦後の女性服役者たちの物語である。彼女たちが獄中で産んだ子どもは、看守に奪われ、全寮制の神学校や修道院に送られたり、養子に出されたりした。この残酷な仕打ちは、全体主義体制特有のえせ科学理論によって正当化され、その時代の有力な医師や聖職者や律法学者らにも完全に支持されてきた。これを題材にノンフィクションを書き始めた著者は、書くうちにのめりこみ、小説にせずにはいられなくなった。
両親の離婚以来マリナは、もうなにも元通りにはならないと感じている。変わらないのはただひとつ、おじいちゃん、おばあちゃんが住んでいるフランスの海岸地方の街、カマルグで過ごす夏休みだ。だけどその年は、絶対に忘れられない夏になった。エティエンヌに導かれて、再び大好きだった馬に乗るという希望と勇気を取り戻すことができたのだ。そして、なにより大事なことに、隙があれば現れてこようとする、悲しみという黒い虫が少しずつ消えていったのだ……。