物語の舞台は、とてつもなく貧しい国の中にある、あまりにも大きな都市の郊外。そこは最も強い者、最も嫌なやつが支配する、国境も法律も文化もない世界だ。グリンゴとチュエコというふたりの少年は、そんな空腹、退屈、麻薬がわりの接着剤しかないところに暮らしている。友情だけが、おそらく人生がふたりに与えた唯一の贈り物だ。ごろつきに囲まれ、性的暴力や非人間的な生き方が日常的な彼らは、ある日、慣れ親しんだ世界との関わり方である犯罪に身を投じることになる。
ビンテージイラスト入りの古典童話。本文はヨーロッパ言語共通参照枠B1レベル相当のスペイン語でリライトされている。中級者・自立した言語使用者向け。該当レベルに合わせて本文中で目立たせた単語の語彙集つき。
バルセロナに住むマヨルカ出身の作家が、一連のプライベートな日記を残して亡くなったお騒がせ演劇女優ドラ・ボニンの伝記執筆を依頼される。主人公は次第に、マヨルカに君臨するベルデラ一族の帝国を崩壊させかねない暗い秘密が日記の中に隠されているのを発見する。ドラは、かつて、ベルデラ一族の遺産相続人イジニの妻だった。ふたりの間の息子レオは、偶然にも作家の幼馴染だった。この予期せぬ再会で彼の人生は大きな転機を迎え、自分の過去に立ち向かわざるを得なくなる。
Milo, um lobinho travesso e aventureiro, cresce pensando que um dia, de repente, será um lobo feroz.
「ブリュッセルに到着するとメディアで、ヨーロッパの夢は終わったという声が聞こえ始めた」本書の主人公たちは、私たちにとってごくごく身近な状況の中でうごめく。21世紀のヨーロッパ、地中海沿岸をのみこむリゾート都市化の波、ホテルの部屋に潜む孤独や、郊外の決まりきった日常。私たちのこの世界から、国籍や宗教、あるいは家族の慣わしなどに基づいたアイデンティティーが消えようとしている。
メキシコ市に住み、ビリヤード用品の販売で生計を立てる野心家は、突然、中学で学ぶ彼の恋人が誘拐されたことを知る。少女を救出しようとの思いに苛まれ、メキシコの人身売買、女性の搾取の巣窟で彼女の行方を捜す。このようにして捜索が始まる本書『Solo que Marla no volverá(ただマルラは帰らないだけ)』はベラ・ブラウンの2作目で、最良の推理小説の要素がすべて盛り込まれている。著者はメキシコで最も時代を感じさせる若手小説家のひとり。
主人公ディエゴがこれまでの自分とは別の存在になるためにやってきた町ダブリン。だが、新たな友人と憂鬱さのせいで酒に溺れ、一生住み続けることができないことも分かっている。ディエゴの心の中に潜むいまだ実行していないある種の犯罪は、彼を過去の面々の元に押し戻そうとしていた。すなわち、自らの運命を受け入れ、人目につかずに逃げおおせるバルセロナへと。その街で彼は、恐怖に打ち勝つために本能的にさまよい続けるが、夜、バル、そして彼と同じように漂流の旅をする一匹狼の群れの中にいても、孤独が消えることはない。
吸血鬼たちは、ミスティヴィルの聖域において長きにわたり守られ繁栄してきた。しかし、ある時、彼らの存在を抹殺しようと始まった卑劣な戦争が次第に激しさを増していき、すべてが変わっていく。戦いは必然的に人間にも波及し、20代のアストン・パーカーの退屈な日常は、謎めいた吸血鬼の黒魔術師エスリンと道ですれちがった夜を境に一変する。エスリンを取り巻く謎と魅力に幻惑されたアストンは知らぬ間に、かつてない岐路に立たされているミスティヴィルの吸血鬼たちを巡る紛争の重要人物のひとりとなっていくのだった。
作者のナチョ(イグナシオの愛称)は現実というものに納得していない。言い換えれば、彼は現実に欺かれていないということだ。それゆえナチョは、長編ではなく短編集を出したのだ。新しい情報を伝えるという意味でnovela(ラテン語のnovelは「新しい」などの意味を持つ)と呼ばれる長編は、ゆったりと十分なスペースを持つジャンルである。一方、彼が我々の前に提示した短編集は一度読めば全体が記憶に残り、かつ新鮮だ。その中では以前のものでさえ新しいからだ。
ベニドルムを舞台に、父親および高級ライター“タリスマン”を探す不正まみれの女刑事が繰り広げるダークな犯罪スリラー。